【漫画家に聞く】独身OLが尾道ラーメンを食べに行くーー絶妙な色気と旅情が魅力の読切漫画にお腹が鳴る
妙に色っぽいOLと瀬戸内の海、そしてラーメン。こんな変わった組み合わせを描いた漫画が『独身OLちゃんが9月の終わり尾道ラーメンを食べに行く話』である。読んだら空腹を覚えることは間違いない。 漫画『独身OLちゃんが9月の終わり尾道ラーメンを食べに行く話』 作者は、商業漫画家として15年活動してきたという作者・美中さん(@michusgt)だ。大都会よりもローカルを舞台にした物語を描くことが多いという彼女に、本作や現在連載中の『人魚と逃避リーマンのあまい海暮らしー瀬戸内あやかし廃校カフェー』のことについて聞いた。(小池直也) ――本作をポストした経緯をお願いします。 美中:元々はグルメ漫画雑誌「思い出食堂」さんの姉妹誌「ひとりごはん」で掲載された作品なんです。「可愛い女の子とラーメンの組み合わせがいい」とか「娘が尾道市立大学に通ってます」といった反応もありました。 ――なぜ尾道ラーメンを題材に? 美中:私自身も瀬戸内在住で広島は身近ですし、家族で尾道ラーメンを食べに行ったこともあり、題材にしやすかったです。尾道ラーメンも大好き。いりこなど爽やかな魚介の風味があって、他の地方ラーメンとは違った味わいがあるんですよ。 ――主人公がスクーターで走る絵も印象的でした。 美中:尾道市立大学を卒業した女友達が「当時ご飯に行く時はバイクを使うことが多かったよ」と教えてくれたんです。坂が多いエリアなのでスクーターが便利みたいで。その風景を描きたかったのもありましたね。あとは身近な漫画家さんやデザイナーさんに広島出身の方が多かったので、登場する方言を添削してくださったんです。あれは助かりました。 ――色っぽい作画も特徴だと思います。こちらについては? 美中:意識せずにそうなってしまうんです(笑)。少女誌や女性向けの恋愛漫画を多く描いていたので、そういった影響もあるかもしれません。セクシーさを抑えた方がいいかなと考えていた時期もありましたが、逆に押し出していった方が個性としていいのかなと最近は思うようになりました。 ――では現在、ウェブ雑誌「ホラーシルキー」(白泉社)で連載されている『人魚と逃避リーマンのあまい海暮らしー瀬戸内あやかし廃校カフェー』についても教えてください。 美中:廃校をリノベーションしたカフェを営んでいる主人公・有瀬涙ちゃんを、大学の同級生・畑貫君が尋ねてくる場面から始まります。彼は涙ちゃんに恋心を持っているのですが、一緒に過ごすうちに「このカフェは怪しい」と思い始めて……という恋愛漫画になっています。作中には恋愛や謎解きだけでなく、瀬戸内のグルメやスイーツも登場するのでぜひ読んでみてください。 ――大都会でなく瀬戸内をモチーフにされるのはなぜでしょう? 美中:瀬戸内に住んでいるし、海街暮らしが好きだから、それを舞台に描きたいという気持ちがあります。都会に比べたら退屈な部分もありますが、穏やかな気候だし漫画家の友達も多くて楽しいですね。 とはいえ京都に6年住んでいたことも、イベントなどで東京に行ったりするので都会も好き。喧噪に疲れた時に瀬戸内に遊びに行きたい、と思ってもらえるような漫画を描いていきたいです。 ――ちなみに美中さんのペンネームの由来は? 美中:ネットの姓名判断で全部100点の名前だったんですよ(笑)。この名前で活動しだしてから、お仕事がたくさん増えたので、この名前にしてよかったなと思ってます。 ――また漫画家のための短期集中プログラム「コルクマンガ専科」の9期生とのことですが、これについても教えてください。 美中:私自身は商業で15年ほど活動してますが、大きなヒット作はないので「これからどうしようかな」と思って受講しました。今までは独学だったので漫画の基礎を言語化できたのがよかったです。 さらにSNSのアルゴリズムの解説やバズを生むためにどうしたらいいか、という授業もあって有益でしたね。素人さんでもプロでも指針になる内容が多いし、毎期50人の受講者がいるので、漫画に真剣に向き合っている同期と知り合えたのも大きかったです。 ――最後にこれからの展望をお願いします。 美中:やっぱりヒット作を出したいので、たくさんの方に読んでいただきたいですね。いずれはドラマや映画化されるような漫画を作れたら嬉しいです。
小池直也