リメイク版『サイレントヒル2』永久保存版 “錆びていく渋谷の裏世界”広告、その全記録【見逃してしまった人のために】
PS2のオリジナル版から23年を経て、PS5やPC(Steam)といった最新鋭のゲーム表現で蘇った、ホラーゲーム『サイレントヒル2』。 【記事の画像(12枚)を見る】 錆びていく稀少な広告 現在、世界中で高評価を得ている『サイレントヒル 2』では、発売までにさまざまなプロモーションが行われてきましたが、その中で、作品のテーマと同様に“現実と非現実”が融け合うかのような体験をモチーフとした展示広告があったのをご存知でしょうか? それは、おそらくゲーム業界でも初となるであろう“錆びていく”広告です。 亡くした妻を捜して霧の街を彷徨う主人公ですが、作中では次第に目の前の現実が変貌していき、気づくと鉄や錆に覆われた“裏世界”に迷い込みます。 シリーズを通底して表現される、この“現実が侵食されていく”感覚が、“錆びていく広告”として、渋谷の駅前の空間を利用して1週間ほどの期間をかけて展示されていたのです。 これは広告でありながらも、シリーズ作品のファンであればぜひ一度は見ておくべき、『サイレントヒル』シリーズの矜持を体現した、ひとつのオブジェとも言うべきもの。ですが、錆びていくのは金属の腐食という自然現象を利用したものなので、その期間に目にできなかったファンも少なからずいらっしゃるはず。 ということで、今回KONAMIさんのご好意で、その記録画像をご提供いただくことができました。見逃してしまった、という『サイレントヒル』ファンの方は、ぜひこのアーカイブ記事でも、この『サイレントヒル』シリーズでしかなしえない、奇妙な広告作品の記録をご覧ください。 DAY1 展示1日目、銀や石灰のように見える、無機質な鉄の壁を背景に、右側には主人公ジェイムスの姿が。中央には、キャッチコピー“その恐怖は、あなたの世界までも蝕む。”との銘が刻まれている。 DAY4 4日後。鉄の背景は、すでに半分ほどが赤銅の錆に塗れており、錆の跡が雨垂れのように無数の線を刻みつけている……。 そしてよく見ると、左側、ジェイムスと対照的な位置では、錆がより色濃く赤黒く変色している箇所が見え始める。 左側の錆が印象深い。そして、全体を俯瞰すると、まるでジェイムスの視界がだんだんと侵食されている様子を表現しているかのようにも思えてくる。 DAY6 そしてさらに2日後……錆がすべてを覆い尽くし、左側には三角頭の異形“ピラミッド・ヘッド”の姿がはっきりと描き出された。 つまり、錆びとともに完成していくひとつの“絵画”、もしくは彫刻のようなものと言えるかもしれない。 覆われていたヴェールは6日目にすべて錆に塗りつぶされるかのようにして、全容が判明するように作られていた。 刻々とその姿を浮かび上がらせて行った、本物の錆に覆われた三角様ことピラミッド・ヘッドのアートワークは、思わず生唾を飲み込むほどの忌まわしい色気に満ちている。 その一方で、ジェイムスの周囲もおぞましい錆に埋もれてしまった。 近づいてみてみると、錆の表面はまさに自然現象として金属が腐食していった様が刻み込まれている。 錆びていく様子を定点撮影した動画は、以下で公開されている。渋谷の駅前の一角で、刻々と侵食されていく『サイレントヒル 2』のオブジェの様子を、ぜひこちらでも確認していただきたい。 『サイレントヒル 2』は、生存を脅かす恐怖ではなく、心理や人間性の暗闇を描き出すサイコロジカルホラー。本作は、現在のホラーゲームに多大なる影響を与えてきただけでなく、あらゆるホラーに関わるクリエイターにも深く愛されてきた作品でもあります。 すでに、発売してまもなく、文字通りのホラーゲームの名作の復活に世界中で圧倒的な高評価を集めています。そして、最新のプレイステーション5の映像表現が描き出す、霧の街サイレントヒル・サウスヴェイル地区の空気感は、Dualsenceの触覚による刺激、そして3Dオーディオによる聴覚情報と音圧が渾然一体となってプレイヤーにもたらされる“圧倒的没入感”は、サイレントヒルの街を五感で“体験”できるレベルへと押し上げていました。 『サイレントヒル 2』では、今回の広告のように、まるで現実が侵食されていくかのような気持ちを、主人公ジェイムスの視点を通じて体験できます。それは、とても哀しくも思い出に残るゲーム体験になるはずです。この錆びていく広告にどこか切なさを感じたとしたら、ぜひ、あの霧の街へ旅してみてください。 『サイレントヒル 2』×ホラークリエイターインタビューシリーズ 『サイレントヒル 2』の狂気の世界に見せられたホラークリエイター陣へのインタビュー全6本を掲載。ホラーゲーム実況の第一人者・ガッチマン氏をはじめ、ゲームファンとしても知られる作家・乙一氏、そしてモキュメンタリーホラー小説で話題を呼んでいる作家陣『近畿地方のある場所について』の背筋氏や『行方不明展』の梨氏、また、ゲームのクリーチャーに造詣の深いホラー作家の黒史郎氏と、日本中の妖怪伝承地を巡り歩く妖怪探訪家の村上健司氏にインタビューから、多角的に『サイレントヒル 2』にしか描けないホラー表現に迫ります。