長き伝統を誇るモナコ・アカデミーが実践する選手育成。「アカデミーのサッカーを個人スポーツとして捉えている」
フランス全土に広がるスカウトネットワーク
ASモナコ(リーグ・アン)のユースダイレクターを務めるパスカル・ド・メシャルク氏のインタビューを通し、世界有数の下部組織を誇るモナコ・アカデミーの全貌に迫った。 モナコは2016-17シーズンに優勝を飾るなど、2013年以降リーグ・アンの中でも常に上位を維持してきた。そんなチームの基盤を作り上げているのが、モナコ・アカデミーからトップに昇格してきた選手たちだ。過去にはティエリ・アンリやリリアン・テュラム、キリアン・エンバペらがアカデミーでプレーした。現在はマグネス・アクリウシェやエリーゼ・ベン・セギルなど、今後が楽しみなタレントがすでにトップチームでプレーしている。 ユースダイレクターを務めるメシャルク氏は、モナコのアカデミーを「(フランス国内で)育成された才能の高さで非常に有名だ」と説明する。続けて、「我々はトップチームだけでなく、代表チームへの道を切り開いた数多くの若手選手を育ててきた。最終的に世界チャンピオンになった選手も5人いる。この偉業は若い選手たちに大きな可能性があることを示している。我々がトップチームとフランスという国に貢献していることを大いに誇らしく思うよ」と語り、これまでの成果についての思いを口にした。 モナコ・アカデミーがフランス国内で良い選手を育てられる理由は「アカデミーを持つクラブの中で、最も長い伝統があるからだ」と言う。加えて、モナコの地域的な特色もある。優秀な選手はフランス全土からスカウトする必要があるが、モナコは地中海とイタリアに近い地域にあるため、効率的なスカウティング・ネットワークの構築が必要だった。そのネットワークが機能し、全国から最高の才能を発掘できるようになっているという。 では、モナコ・アカデミーは若い選手たちをどう選考しているのか。選手を選ぶ際の基準についてメシャルク氏は次のように説明する。 「選手が12歳、13歳、14歳のときに、特定の”指標”を使って才能を評価するんだ。その基準で判断し、モナコへの加入を熱望している選手がいれば、選抜する。有望な若手選手のプロフィールを明確にするために、45ページ以上に及ぶ包括的な評価ツールを作成している。遺伝的なポテンシャル、フィールドでの問題解決能力、敗北に直面したときの精神的な回復力、技術的なスキル、そして社会的な環境など、必要不可欠な要素が含まれている」 スカウトされた選手たちがモナコのアカデミーに加わり、切磋琢磨していくわけだが、そこからどう指導していくのかもポイントになる。メシャルク氏は「アカデミーでのサッカーはチームスポーツではあるが、チーム全体をトップチームに昇格させることはできない」ことを踏まえ、「我々はアカデミーのサッカーを個人スポーツとして捉えている。チームの一員として働く能力を養うのと同時に、個人の進歩を確実にするためのプログラムを考案している」と”個”を伸ばす取り組みを行っていると明かした。