岸田政権を正面から批判できず、都知事選もスルー…維新が迷走を深める「大阪万博」以上に厄介な問題
■東京都知事選挙を見送ったのは失敗 7月7日投開票の東京都知事選挙で、二重国籍を隠して政治家になった蓮舫氏が立候補したことは、学歴粉飾疑惑の小池百合子知事にとって天佑だ。維新にとっても絶好のチャンスなのに、候補者も立てなければ推薦もしない不戦敗状態である。 もっとも、選挙戦の推移によっては前広島県安芸高田市長の石丸伸二候補に好感を示すとか、「蓮舫知事」阻止を口実に小池知事に傾斜するとかはあるかもしれないが、とにかく残念だ。 それから、維新について気になるのは、地方議員などの不祥事の多さである。維新は候補者に旗は使わす一方で、身辺調査をしっかりしない、資金は個人任せ、ちゃんと選挙区内の住所に住んで、選挙違反もせず、当選したら経費の使い方もきちんとする、といった当たり前の指導も不十分である。 そして、問題が露見したら、処分の基準がよく分からないまま、悪質かどうかより組織に迷惑かどうかだけでトカゲの尻尾切りをするという冷たさも残念だ。 ■「大阪重視」はいいが「大阪本位」は困る 今年1月の京都市長選挙は象徴的だった。京都党という地域政党の創始者である村山祥栄・元京都市議を推薦し、告示直前の世論調査では、自民・公明・立民が揃って推薦した候補者に勝つかもしれないと言われていたが、村山氏が参加者のいない政治資金パーティーを開催したとして維新などは推薦を取り消し、結果的には3位に終わった。 本人がうかつだったのが悪いが、維新にとって非常に大事な選挙だからこそ、資金も出すべきだし、しっかりしたスタッフを送り込めば起きなかった事件だ。 どの程度悪質かも判断せず切り捨てたが、出口調査では維新支持者の投票先トップは村山氏だった。 維新の大阪重視という姿勢は東京一極集中対策としては正しいと思うが、大阪の都合で党運営がされているという印象は損だ。 野党第1党、そして維新主導の政権樹立を目指すためには、こうした“欠点”はできるだけ早く解消していくことが絶対に必要だ。 ---------- 八幡 和郎(やわた・かずお) 歴史家、評論家 1951年、滋賀県生まれ。東京大学法学部卒業。通商産業省(現経済産業省)入省。フランスの国立行政学院(ENA)留学。北西アジア課長(中国・韓国・インド担当)、大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任後、国士舘大学大学院客員教授を務め、作家、評論家としてテレビなどでも活躍中。著著に『令和太閤記 寧々の戦国日記』(ワニブックス、八幡衣代と共著)、『日本史が面白くなる47都道府県県庁所在地誕生の謎』(光文社知恵の森文庫)、『日本の総理大臣大全』(プレジデント社)、『日本の政治「解体新書」 世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱』(小学館新書)など。 ----------
歴史家、評論家 八幡 和郎