草なぎ剛が自身に「お前、できるの?」と問う真理 できないかも、という“恐怖”があるから面白くなる
白石和彌監督最新作であり、初の時代劇「碁盤斬り」に主演している草なぎ剛さん。役を演じるうえでの“恐れ”、そして自身が感じる“成長”について語った。AERA 2024年5月20日号より。 【写真】蜷川実花が撮った!AERAの表紙を飾った草なぎ剛さんはこちら * * * ――映画「碁盤斬り」では、草なぎ剛の怒りを内に秘めた、抑えた演技が光る。碁を打つ手、その佇まいに魅了されるが、役づくりについて「監督とはとくに何も話していないですよ」と、拍子抜けするほど飄々と答えた。 草なぎ剛(以下、草なぎ):やっぱり、白石監督がすごいから。衣装合わせの段階から、実際に照明を組み、写真を撮って。その段階で、監督のイメージができ上がっているんでしょうね。そのうえで、僕なりに楽しくやってみる、という感じで演じていました。白石監督の映画「凪待ち」に(香取)慎吾ちゃんが主演していて、慎吾ちゃんと監督は友達のような関係性を築いていたから、僕も安心して現場に臨むことができた。白石監督からも「剛君のことは、慎吾君から聞いているよ」と言ってもらえて。改まって話し合うことはなくとも、通じ合えていたから演じることができたのかな、と思いますね。 ――どんな役を演じても、想像を超えてくる。だが、自身を「役者」とカテゴライズすることはないという。「自分は役者だ」と縛っていないからこそ、できることがあるのかもしれない。 草なぎ:それはあるかもしれないですね。色々やっているからこそ、役を演じるうえでのヒントになっていく。そう感じることはありますね。たとえば、ステージでギターを弾く緊張感があるから、そうした感覚が役を演じるときのヒントにもなる。若い頃からそんな環境にいたこともあって、「むしろ演技だけやっているのってつらくない?」と思うこともあるんです。両方やっているからいいんじゃないですかね。
■「お前、できるの?」 ――質問には常に軽やかに答える。新たな役に対して「できなかったらどうしよう」と悩んだり、苦しんだりすることはないのだろうか。 草なぎ:それはありますよ。どの役も「はたしてできるのかな」と思いながら現場に入っています。例えば、国会議員秘書役を演じたドラマ「罠の戦争」も、トランスジェンダー役を演じた「ミッドナイトスワン」も、今回の「碁盤斬り」で演じた浪人・柳田格之進もそう。毎回、「大丈夫かな、できるかな」とは思うのだけれど、それをどこかで楽しんでいる自分もいるんですよね。自分に「お前、できるの?」と聞いているような感覚があるというか。 できないかもしれない自分を、どこかでちょっと楽しんでいる。そんなところもあると思う。極端な話、最初からできてしまうもの、想像できるものって、自分が考える面白さの域を超えていかないと思うんですよ。 「もしかしたら、できないかもしれない」「このままだと、大変なことになるんじゃないかな」という“恐怖”があるから面白くなり、作品ができ上がっていくのだと思う。そうしたところを含め、楽しんでいるような感覚はあるかもしれないですね。 ――俯瞰できるようになったのは、いつ頃からなのだろう。 草なぎ:やっぱり徐々に、かな。若いときは、できなくて失敗すると落ち込んだりしていましたね。悩んだりもしたし、「なんでできないんだろう」と思ったりもした。でも、徐々に「成功は一つじゃないんだ」と考えるようになった。失敗から学ぶことはたくさんあるし、失敗した方が身になることってたくさんあると気づくことができた。それに気づけた自分が偉かったですね(笑)。 経験を積み、失敗した方が成長していると思えるようになると、“怖さ”が徐々になくなっていった。そんな気がしますね。