オゼンピックが狙っている-肥満治療薬からの脅威に砂糖業界は鈍感
ロンドンを本拠とする商品取引会社、ザルニコウ・グループの分析責任者、スティーブン・ゲルダート氏は「私はこれが非常に重要なことになるのではないかと思うのでよくこれについて考える」と話す。
供給が逼迫(ひっぱく)し薬価が高騰しているにもかかわらず、肥満と糖尿病の両方に効くGLPー1薬の売り上げは2023年にすでに190億ドル(約3兆円)を超えた。ゴールドマン・サックス・グループは、世界の肥満治療薬市場の規模は2030年までに1000億ドルを超えると試算。ブルームバーグ・インテリジェンスは800億ドルと予測している。
モルガン・スタンレーによると、肥満治療薬を服用している米消費者の60%以上が、キャンディー、アイスクリーム、焼き菓子などの甘いお菓子を控えたと回答している。
それでも、ブローカーのヘッジポイント・グローバル・マーケッツの米州砂糖部門責任者、カルロス・ムリロ・バロス・デ・メロ氏は、生産量の変動に比べれば消費量の変化は「ごくわずか」なため、業界は消費量の推定にあまり時間をかけていないと述べた。
ED&Fマンの調査責任者、コナ・ハーク氏は、「まだずっと先のことなので、影響はまだ感じられない」と言う。新興市場では砂糖の需要はまだ伸びているとも指摘した。
ブラジルのコンサルタント会社データグロの創業者、プリニオ・ナスタリ氏は「米国のような場所でも、多くの顧客が高フルクトース・コーンシロップのような代替品よりも砂糖を好むため、砂糖に対する強いニーズがある」と述べた。
食品の多様化
しかし、GLPー1薬はすでに株価を動かしている。昨年10月にはウォルマートが消費者の食品購入が減っていると明らかにしたため、S&P500種の生活必需品の指数が下落した。トゥルーイスト・セキュリティーズのアナリストは、薬の影響が不明だとしてクリスピー・クリームの投資判断を引き下げた。ネスレはGLPー1薬のユーザーを特別にターゲットにした冷凍食品の新ラインを立ち上げようとしている。