20年で半減 深刻な外科医不足 手術待ちに外科閉鎖も 女性医師語る「医療現場の実態」
■なぜ30代で減少?女性医師に立ちはだかる“出産後の壁”
なぜ、30代でやめてしまう女性が多いのでしょうか。大阪医科薬科大学の河野さんに、外科の現場の実態を伺いました。 消化器外科の河野さんは、医師1年目から大学病院などの一般外科で研修や勤務を行い、6年目、35歳の時に出産し、退職しています。 この時、「年間約800件の手術を、7人の医師でこなしていた。出産予定日は7月初旬だったが、当時の上司には6月30日まで働いてほしいと言われた」ということです。 河野さんは、当時を振り返り、 「出産後も働き続けている女性医師は、周囲にいなかった。産休育休中は、代わりの医師が補充されない。退職して代わりの人を派遣してもらわないと、同僚に負担をかけてしまうので、退職することにした」と話しています。 出産後の『壁』です。河野さんは7年目、子どもが1歳になった時に、別の病院で復職しました。 しかし、「最初半年間は、子どもがいるという理由で、主治医(執刀医)も外来も任せてもらえなかった。仕事は週に2日の助手だけ」だったといいます。 なぜでしょうか? 河野さんです。 「外科医は、主治医制をとっていることが多く、24時間365日働いて当たり前、いつでも担当患者の急変に真っ先に駆けつけなければならない、という考えがある」ということです。 河野さんの当時の1日の過ごし方です。 朝4時に起床、1日分の食事づくりや手術記録の確認をして、6時に朝食、7時半に出勤、患者の診察や手術などを行い、夜7時に子どもの迎えに行き、9時に子どもを寝かせて、10時に就寝、という生活でした。 復職に際して、河野さんは、勤務先から徒歩1分のところに引っ越しました。 「子どもの迎えの時間までに仕事が終わらないときは、家の用事を終わらせてから、夜中に再出勤したり、朝4~5時に早朝出勤した」といいます。 河野さんが感じた、女性医師に立ちはだかる外科の『壁』です。 「キャリア形成に重要な時期と、出産・育児の時期が重複する」ことが挙げられます。 20~30代はキャリア形成のために多くの症例をこなす必要があるので、出産・育児で休むとキャリアの一線から退くことになってしまうといいます。 河野さんが感じた『壁』の2つ目です。 「執刀機会などに男女格差がある」ということです。 中難度以上の手術は男性に割り当てられることが多いけれども、難しい手術を経験しないと、スキルも評価もあがらないので、女性が指導医以上に昇進しにくいといいます。外科医が研修する病院の代表者の女性の割合は、1%です。 こうした問題の解決に向けて、 河野さんです。 「子育て中の時短勤務や当直免除は、短期的な対応であり、長期的な問題解決にはならない。主治医制ではなく、チームで患者を診るようにして負担を分散するなど、男女ともに働き方改革を進める必要がある」