【高校野球ベストシーン’23・東京編】共栄学園がミラクルサヨナラ劇!岩倉を悲劇が 襲った東東京準決勝
2023年もあとわずか。ことしも高校球界ではさまざまな印象的な出来事があった。各都道府県ごとにベストシーンを思い出してみよう。 【動画】河川敷の限られた環境で優勝!共栄学園に密着 【夏選手権東東京大会準決勝・共栄学園vs.岩倉】 甲子園出場をかけた高校最後の夏の大会は、時に残酷な結果を生む。今年の夏、東東京大会準決勝は、無情とも思える結末となった。初の4強で勢いに乗る共栄学園と、1997年夏以来の甲子園出場を狙う岩倉。激闘はサヨナラで決着がつき、共栄学園が勝利した。 9回裏2死二、三塁のピンチ。4対3とリードしていた岩倉の右腕エース・大野 巧成投手(3年)は、打者をカウント1-2と追い込み、あと1球で勝利というところまできていた。この試合107球目、こん身の142キロの直球を投げ込むと、打球はフラフラと三塁方向へ上がる。これをつかめば決勝進出が決まる。しかし、三塁手の高橋 梁内野手(2年)が捕球できず、内野安打に。三塁走者だけでなく、二塁走者も一気に生還して逆転サヨナラ。ホーム付近で歓喜に沸く共栄学園ナインのすぐ横で、大野はうずくまり、しばらく立てなかった。 あのシーン、大野と捕手も少し飛球を追いかけている。2年生の三塁手はやや遅れて飛球を取りに前進してきた。あの「微妙」な間が、三塁手を惑わせ、慌てさせてしまったようにも見える。勝利をつかむことは、やはり思うほど簡単なことではない。 2点を先制して迎えた8回には、併殺を焦って遊撃手が悪送球。その後、一塁手もゴロを処理して三塁へ送球するもやや右にそれ、三塁手も捕れなかった。その後、遊撃手も正面の簡単なゴロをファンブル…。次々と信じられないミスが続き、この回2点を失っている。リードしている側の守備にかかる重圧は想像を絶する。 大野は内野陣の失策にも表情を変えずに最後まで投げ抜いた。他校から2年春に転校。公式戦に1年間出場できないつらい時期を乗り越え、最後の夏にマウンドに上がっていた。帝京、修徳を破り、4強へ。甲子園が見えてくるところまで勝ち上がれた。チームメートと一緒に、公式戦で戦える嬉しさをかみしめていたに違いない。グラウンドでは最後は涙で終わったが、球場を去る時には、落ち込む選手を慰める姿が見られた。心が救われる気がした。 最後まで諦めない驚異の粘りを見せた共栄学園は、決勝も9回の逆転劇で甲子園切符をつかんでいる。 あの日、フラフラと上がった打球の行方…。野球の神様は、勝者にも敗者にも、忘れられない夏の思い出を与えた。