大阪市内で年の瀬恒例の「加藤登紀子ほろ酔いコンサート2024」の取材会に出席した加藤登紀子（撮影・松浦隆司）

＜ニッカンスポーツ・コム／芸能番記者コラム＞ 　歌手加藤登紀子（80）の年の瀬恒例の「ほろ酔いコンサート2024」が11月20日の福岡を皮切りに全国9都市を回る。観客も加藤も日本酒を飲みながら音楽を楽しむという異色のコンサートは、1971年（昭46）、東京・日劇ミュージックホールで初めて開催された。歌手活動60周年を迎えた今年は「私の60年を支えてくれた出会いをテーマに懐かしい曲を歌いたい」。 　1965年、東大在学中に第2回日本アマチュアシャンソンコンクールで優勝し、歌手デビュー。これまで多くの歌、かけがえのない人々と出会った。 　11月10日に没後10年を迎える俳優高倉健さんとは、映画「居酒屋兆治」（83年）で共演した。高倉さんが歌った映画の主題歌「時代おくれの酒場」の作詞・作曲は加藤だ。 　「高倉健さんはお酒が飲めない方でした。一緒に酒盛りをしたことはないけど、居酒屋兆治では高倉さんはお酒を飲む役で、私が飲めない役だった。逆だねと言いながらね。懐かしいな」 　晩年の石原裕次郎さんのために作曲した「わが人生に悔いなし」。作詞は、故なかにし礼さんだ。 　「裕次郎さんはお酒が大好き。裕次郎さんが病気でお酒を止められていたけど、台所に隠してある日本酒を出してきて、一杯やるのが楽しみだった。なかにし礼さんがその話を聞いて、♪鏡に映る　わが顔に♪の歌詞の出だしはそこからきた」 　中森明菜に歌うことを勧めた大ヒット曲「難破船」は、84年に加藤がつくったものだった。自身の「ひとり寝の子守唄」「百万本のバラ」……。 　「どの歌も私は、ずっと歌い続けている」としみじと語り、「その曲ができたときの時代とのつながりも深いんだけど、そこで、終わる歌ではなく、一緒に生きてきてくれた歌だった。いまごろになって、何十年も歌っている歌が、より私にとって、かけがえのないものになってきている」 　歌とともに、日本酒とともに60年が過ぎた。 　「本当に、すばらしい人たちに巡り会えた。私の小さな玉手箱から出てきた歌が大きなステージに上がっていく。本当にうれしい出会いがあった」 　今年の「ほろ酔いコンサート」は、出会った人たちに思いをはせる。【松浦隆司】