「自衛隊員の手榴弾事故」現状の対策は不十分なワケ…旧式の危険な手榴弾が訓練でも使用されている
これを行っていれば件の2曹の被弾は顔面と頸部だったので防げたはずだ。これは必ずしも遮蔽物がない実戦でも有用な防御方法だ。だがこのような指導を陸自では行ってこなかった。陸自では教範を見直すといっているが現状どうなるは不明だ。 この事故で使用されたのは米軍でも使用されていたM26破片型手榴弾だ。M26は50年代に開発され米軍で採用された。陸自では昭和62年度から豊和工業が製造したものを調達しているが現在では調達されていない。米軍はすでにその後継のM67手榴弾を採用してM26は現在では使用されていない。
M26は全方位に、一定範囲で均一に軽量な破片が飛び散るように設計されている。軽量な破片は空気抵抗で急速に速度低下するので投擲者は爆発から充分な距離を保つことができて安全が確保される。確保されるように設計されている。これはその前に使用されていたMk2に問題があったから改良された結果だ。 ■訓練でも使用される旧式の手榴弾の正体 だが陸自ではそのもっと旧式なMk2を大量に保有し、訓練でも使用している。これは極めて危険だ。Mk2手榴弾は陸自では「MK2破片手榴弾」の名称で採用され、その形状から通常パイナップルと呼ばれている。一般の人間がイメージする手榴弾だ。アメリカ軍では第1次世界大戦の直後に採用されて第2次世界大戦でも使用された。1950年代にM26手榴弾が開発された後もベトナム戦争でも使用されたが、危険であるために米軍ではベトナム戦争後に使用を停止した。
旧世代の手榴弾であるMk2には大きな欠点がある。Mk2は本体が鋳造製で溝が彫られ、表面は凹凸になっている。この凹凸が爆裂時の破片となるが、破片生成が不規則でまったく予測不可能である。威力が均一に発揮されないMk2は爆薬を少なく弾殻を重くして殺傷能力を強めたので、大きな破片が予想外に遠方まで飛来して投擲者を危険にさらすことがあった。 爆発有効範囲は5~10ヤード(4.5~9.1メートル)とされているが、50ヤード(45メートル)先の人間を殺傷する場合もあるという。つまり、有効殺傷範囲が均一ではなく、破片は予想外に遠くまで飛び、投擲手や友軍を殺傷することがある。米軍がベトナム戦争以降にMk2の使用をやめたのはこの危険性ゆえである。