2024年1QのVTuber業界調査レポートにMetaのオープンOS発表 GWもバーチャル業界には波あり
■2024年1QのVTuberはどうだった? 視聴状況などを調査したレポートが話題 【画像】2024年1Qの「VTuberの総視聴時間」をまとめたデータ(Streams Chartsより) GWのさなか、VTuberに関する興味深いレポートが提出された。海外運営のストリーマー集計サービス「Streams Charts」と、日本のVTuber配信データ分析サイト「VSTATS」の共同による、2024年第1四半期のVTuberレポートだ。 とくに目を引いたのは、2024年第1四半期だけでVTuberの総視聴時間が4億321万時間にものぼったというデータ。数値のインパクトに驚かされつつ、いまや戦場はYouTubeだけでなくTwitchにも広がり、男性VTuberも勢力を伸ばしつつあるという調査結果は、筆者の体感とも一致する。「もはやVTuberは日本のYouTubeだけの文化ではない」ということを示すデータだ。VTuberというカルチャーのいまを知る上で、貴重な資料となりそうだ。 一方、日本国内では「にじさんじ」のレオス・ヴィンセントが地上波レギュラー入りを果たした。テレビ朝日で昨年より放送中の『金曜日のメタバース』リニューアルに伴い、同番組のレギュラーメンバーとなったのである。もともと『VRChat』などのメタバースカルチャーを扱うレアな地上波番組だったが、リニューアルによってVTuberも扱うようになり、それに伴う起用と言えるだろう。 5月3日のリニューアル初回放送では、レオス・ヴィンセントを軸に「VTuberとはなにか」を解説。生身のタレントとバーチャルタレントが共存するひな壇で、それぞれが垣根なくコメントを交わすユニークな画作りが印象に残る。かつてTBSテレビの『サンデー・ジャポン』にて、キズナアイが特大モニターに映る形で出演していたのを知る身としては、隔世の感がある。なお、メタバース領域も引き続き視野に入れているようで、次回は『VRChat』で大人気なイベントのひとつ「サキュバス酒場 LILITH」がフィーチャーされる模様だ。 このほか、「にじさんじ」では『第6回マリオカートにじさんじ杯』が同時接続数20万超を記録したり、大型フェス『にじさんじ 7th Anniversary Festival』の開催も発表されたりと、華々しいトピックが届いた。「ホロライブ」でもAZKiが100万登録を達成するなど、最前線の好況はまだまだ続きそうだ。 ■サンリオVfesで新たな企画が始動 VR生まれのインディーズを応援し続けるサンリオ 『サンリオVfes』の熱気も落ち着いたサンリオでは、新たなVRChat企画が持ち上がった。VRChat発のアイドルにフィーチャーしたライブイベント『VIRTUAL IDOL CONCERT feat. SANRIO VirtualFestival』だ。 出演者は『VRChat』内で活躍するアイドル5組。大手バーチャルアーティストが集まった『サンリオVfes』とは異なり、いわばインディーアイドルをサンリオがプッシュする、なかなかに挑戦的なイベントだ。とはいえ、キヌを筆頭に多くのVRアーティストをプッシュしてきたこれまでのサンリオを思えば、一貫している展開と言えよう。 ちなみに、サンリオも関わるVTuberグループ「にゃんたじあ!」からは、2期生3名のデビューも告知された。チャレンジングな施策に果敢に挑み続ける、サンリオの姿勢がここからも垣間見えるところだ。 『VRChat』関連のトピックとしては、甲賀流忍者ぽんぽことピーナッツくんのテーマパーク『ぽこピーランド』がQuest単体/モバイルに対応したことが挙げられる。これまでは訪問にゲーミングPCが必要だったが、『Meta Quest 2』など一部のVRヘッドセット単体や、Androidスマートフォンだけで訪問できるようになったということだ。これまで「気になっていたけど訪れることができなかった」という方は、ぜひ行ってみてほしい。体験の質はPCで体験するものとほぼ大差ない。 ■「Meta Horizon OS」発表 オープンなOS発表で、XRヘッドセットの勢力図は変わるか? くわえて、VR業界にはひとつ大きなインパクトがあった。MetaがVR・MRヘッドセット向けのOSを「Meta Horizon OS」として、サードパーティ向けに開放したのである。『Meta Quest 2』や『Meta Quest 3』のOSがオープン化した、ということである。 すでにASUSとLenovoが「Meta Horizon OS」を活用して新たなVR・MRヘッドセットの開発に乗り出したらしく、さらにXboxと連携した“限定版のMeta Quest”の開発も動き出しているという。後者の詳細は不明だが、「Meta Quest」内でXbox Cloud Gamingがプレイできるようになった件の発展型となる可能性もある。 いずれにせよ、「Meta Quest」シリーズで育った強力なエコシステムを、他社も利用できるようになるのは大きな一歩と言える。すぐに世の中に新たなデバイスが出るわけではないと思うが、VR業界にたしかな変動が起こりそうだ。 そして、毎月恒例の「Steam」公式のハードウェア&ソフトウェア調査では、興味深い結果が出てきた。利用率の高いVRヘッドセットとして、『Meta Quest 3』が急上昇してきたのである。『Meta Quest 2』が未だに38.03%と最上位だが、15.92%の『VALVE INDEX』の直下である、15.49%に位置している。 『VALVE INDEX』は、PC専用VRヘッドセットの名機である。だが、2019年の生まれである以上、性能はいまやミドルクラスといったところ。各所の在庫も枯渇しており、新規購入はもちろん、故障時のケアも期待できない状態だ。名機を手放し、新たな相棒として『Meta Quest 3』を持ち出す人が現れているのかもしれない。
浅田カズラ