吉本興業のギャラと契約の問題めぐり議論百出
吉本興業の一連の騒動は、反社会勢力との関わりを含め、いろいろな問題を浮き彫りにしているが、その一つとして所属タレントのギャラ問題や契約問題など待遇面もクローズアップされ、一部所属タレントらがギャラの安さや生活が不安定な状況を嘆くコメントを出すなどするに至り、ネット上でもさまざまな職業、立場の人たちの間で議論を呼んでいる。
千原せいじ、異議唱える一部芸人に「便乗したヤツら」と不満
27日には「あさパラ!」(読売テレビ)に出演した吉本興業所属の千原せいじが、この度の騒動を機に続々と不満を唱えるタレントらが出てきたことに対し異を唱え、「この問題が出てから便乗したヤツらは諸先輩方がやってきた道を否定してるのかな、と思てまう」とコメント。ギャラについては、他の事務所との大きな相違点として吉本には劇場があることをあげ、単独ライブでもし赤字が出たら吉本が補填してくれるなど、吉本ならではの良い面があると主張した。 この発言をめぐりネット上には、「権力側の意見。せいじの主張こそパワハラでは」「劣悪な仕事環境なのに若手がそれを訴えることに憎悪を抱くとは最悪」「せいじらベテラン芸人たちが何もしなかったツケがいまになって噴出しているのでは」といった意見や、「ギャラについてはせいじの言う通り、最初から飯が食えるわけがない」「正論にじーんときた」「確かにそう。芸能人はサラリーマンとは違うので嫌なら移籍すればいいだけのこと」といった意見も。
問われる吉本興業の企業としてのあり方
もともとこの問題が浮上したあたりから、ギャラはじめ待遇をめぐる問題についてはネット上で意見が噴出していた。タレントに限らず、個人事業主としてフリーランスで仕事をしている人たちに目立つのは、「安定職ではないことは承知のうえ、それでもこの仕事をしたいからやっているという以上、すべては自己責任。食えなければ副業をするなど自分自身で工夫すべき」といった意見で、売れてもいないのに不満を唱えるタレントは甘えている、といった論調だ。また、会社員でもプロフェッショナリズムを持って仕事をしている人たちからは「給料の3倍以上は稼がないと会社に貢献しているとは認められない。不満を漏らしている芸人たちはそれぐらいのテンションで仕事をしているのか」などと、厳しい見方も出ている。 「それぞれの意見に一理はあると思いますし、ケース・バイ・ケースということもありますが、フリーランスでもあまりに不当な状況、事実上労働者と認められる状態に追いやられたり、トラブルに遭った場合などは解決に向けて手助けしてくれるユニオンがある時代です。不安定な道を志し、売れなければ生活が苦しいのも覚悟のはず、という前提は確かにあるものの、終身雇用制が事実上崩壊しフリーランスで働く人が増えた今、ひと括りに断じるのはなかなか難しくなってきています。とくに今回の場合は吉本興業の企業としてのあり方が問われている側面も大きい。それが転じて、芸能界全体でタレントと事務所の関係を見直すべきだという声も大きくなりつつあります」と話すのは、芸能プロダクション元マネージャーの50代男性だ。 その人の置かれている状況や仕事における実力、仕事先の会社の社風など、さまざまな要素で見方は異なってくるかもしれないが……今後、吉本興業は、希望するタレントには原則として契約書を締結する方針とみられる。吉本興業の騒動のほかにも、事務所を移籍した場合に一年間は芸能活動ができないなど芸能界の古くからの慣習にまつわる問題が、時代が令和になってから、よりクローズアップされてきている。 (文・志和浩司)