阿部サダヲの昭和おじさんが最高! 『不適切にもほどがある!』で愛されること間違いなし
俳優・阿部サダヲここにありーー。1月26日よりTBS系で放送がスタートする金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』は、「こんな阿部サダヲが見たかった!」というシーンのオンパレードだ。 【写真】コンプライアンスギリギリ(アウト!?)の小川市郎(阿部サダヲ) 阿部の旧知の仲である宮藤官九郎が脚本を務める本作。時は1986年、中学の体育教師・小川市郎(阿部サダヲ)は「地獄のオガワ」と呼ばれており、生徒たちからも恐れられていた。そんな彼が、ひょんなことから、2024年へタイムスリップ! “昭和のおじさん”の市郎は、現代人にもおかまいなしに、コンプライアンスギリギリ(アウト!?)の発言をぶつけていく。彼の極論が、令和を生きる人に考えるきっかけを与えて……。 本作のプレミア試写会にて第1話を鑑賞したが、阿部をはじめとする個性豊かなキャストのやりとり、物語の展開、すべてが面白くて、吹き出してしまう場面も多々あった。物語後半のギミックが楽しいし、今の時代に息苦しさを感じて、縮こまっている自分もバカらしくなった。宮藤の描くコメディが堪能できる贅沢さと、描かれる世界観に心がスッキリして、非常に気持ち良かったのだ。 昭和ギリギリ生まれの私でも「すげえ……」と思う過激なシーンや台詞が多々あった第1話。デフォルメはあるにしろ「昭和ってこんな時代だったのか!」とカルチャーショックを受けたし、だからこそ、耐性のない世代がどう感じるのかは興味がある。一種の時代劇のような感覚で、新鮮に映るかもしれない。 一方で、今では考えられない発言もあるため、放送後SNSには「かなり攻めてるw」「今の時代だと問題発言だろ笑」といった書き込みもあるだろう。だけど、それだけでいいのだろうか? この作品は、シンプルに楽しんで、ガハガハと笑うのは大前提として、観た後に“このドラマが伝えたいこと”について深く考えるべきではないか。「市郎が言っていることが正解」、「現代人が言っていることが正解」と白黒つけるのではなく、いろんなものを剥ぎとって、核となるメッセージを読み解くべき作品ではないか。そんなことを思った。 本作の“不適切”を一手に引き受けるのが、主人公の市郎である。彼は、昔ながらの恐怖政治タイプの先生なのに、どこか憎めない。令和にいたら絶対アウト。炎上確定。それなのに不愉快さがない。物語の中で躍動していて非常に面白い人だったし、「小馬鹿にされている勝気なおじさん」のような空気を感じる。学校では恐れられているのにも関わらず、スケバンの娘・純子(河合優実)に手を焼いているのもおかしい。 ここまでエンタメとして楽しめるキャラクターになったのは、「阿部サダヲだから」に他ならない。 これまで阿部は、ドラマ『タイガー&ドラゴン』(2005年/TBS系)、『マルモのおきて』(2011年/フジテレビ系)、『スイッチ』(2020年/テレビ朝日系)など、パブリックイメージのある役を演じることもあれば、映画『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017年)や『死刑にいたる病』(2022年)など、ゾッとする役も演じてきた。もはや「演技がうまい」の一言だけでは片付けられない“語りたくなる”魅力がある。 宮藤が阿部のために当て書きしたような市郎も、観る人によってさまざまな印象を抱くはず。そうやって阿部は、キャラクターの“多面的な魅力”を、演技によって引き出すのだ。観る人に語らせたくなる意味では、時代の変化や価値観の違いを描く本作との相性も抜群だと思う。 言わずもがな昭和ならではの暴言や体罰を肯定するわけではない。ただ、作品を通して、市郎からいろんなものを“受け取る人”が増えたらいいなと思う。私も、自分の目に見えているものだけではなく、宮藤、制作スタッフ、そして阿部が込めた“その裏にある想い”を感じて視聴していきたい。
浜瀬将樹