平昌五輪は成功だったのか?
IOCへの放映権料契約のナンバーワンは、アメリカ4大ネットワークのひとつであるNBCのグループだ。1988年ソウル五輪以降の夏季大会、2002年ソルトレークシティー五輪以降の冬季大会のすべての五輪中継を続けているNBCは、2014年ソチ五輪から、まだ開催地も決定していない2032年の夏季までの10大会分を120億ドル(約1兆3000億円)の巨額で契約している。アメリカで人気のフィギュアやスノボが、アメリカ東部のプライムタイムにおさまるように午前中に組まれたのもテレビ放映優先のためだ。 NBCと並んで大きな放映権料をIOCに払っているのは、13億ユーロ(約1750億円)で契約したユーロスポーツのグループ。スキー、ジャンプやノルディックスキーが遅い時間に行われたのは、欧州の人気競技を欧州の放映時間に合わせたためである。 オリンピックの運営が、放映権料とスポンサーフィーに支えられている以上、2年後の東京五輪、4年後の北京冬季五輪と、欧米と時差のあるアジアでの開催では、続けてアスリートファーストでなく、テレビ局ファーストとなる構造は変えられないのかもしれない。だが、開催地の問題も含めて、そろそろ従来のオリンピックのビジネススタイルに限界が近づいていることは確かである。スポンサーのプライオリティに疑問を抱き下りる企業も出ているし、日本ではスポンサーの既得権益を守るため出身校などで、パブリックビューイングの自粛なども起きて、本来のオリンピック運動の意義からも離れている。 NBCの記事は、「今大会は五輪史における転換点として記憶されそうだ。焦点は、選手たちや、その背景のストーリーに向けられていた」とも報じた。 この点は同意である。その象徴として同記事は、小平奈緒のストーリーを書いた。 「スピードスケートの女子500メートルで日本の小平奈緒は、勝利のあとに、銀メダルに終わった韓国のイ・サンファの健闘を称え、『スポーツは世界を1つにできる。シンプルなこと』と語っていた」 何をして五輪の成功と定義するのかは難しい。 五輪記録、世界記録の数か、ドーピングが発覚した選手の数が少ないことか、観客動員数か、視聴率か、運営事故の数か……。競技のつつがない進行か。それとも感動の数か。開催地域の経済的発展か。文化としてのスポーツの啓蒙、定着か。開催都市、国の健康的生活へのつながりなのか。はたまた五輪レガシーの構築か。 五輪の成功の是非は、5年後、10年後の姿を見るまで論じることはできないのかもしれない。 7競技で史上最多の102種目が行われた今大会のメダル最多獲得国はノルウェーの金メダル14個を含む39個。次に金メダル14個を含むドイツの31個、3位が金メダル11個を含む29個のカナダだった(日本は11位)。 NBCの記事は、こう締めくくられていた。 「カレンダーに印を入れておこう。東京(五輪)の開会式は2020年7月24日だ」 2年後の東京五輪を成功に導くために必要なことは何だろう。