魚のひれの形を決める「Hox遺伝子」とは 埼玉大などがゲノム編集技術で初めて解明
埼玉大や宇都宮大の研究グループが、魚の背びれや尻びれの形を決める遺伝子の働きを解明した。埼玉大の川村哲規(かわむら・あきのり)准教授(発生生物学)は「バラエティーに富んだひれの設計図を初めて明らかにできた」と話す。研究成果は米科学アカデミー紀要に6月掲載された。(共同通信=大井みなみ) 研究では、動物の体全体の位置情報を決めるとされる「Hox(ホックス)遺伝子」に着目。この遺伝子は、脊椎動物ではDNAの中に1~13番が並んでいる。マウスの場合、1番の遺伝子が頭側の形を決め、尾部側を決める13番に向かって番号順に体の形成を担うことが判明していたが、魚では詳しく分かっていなかった。 川村准教授らはゲノム編集技術で、特定のHox遺伝子を壊した魚をつくり、ひれの形成への影響を調べた。例えば11番の遺伝子を壊すと、コイ科の淡水魚ゼブラフィッシュは尻びれがなくなるのに対し、メダカでは背びれがなくなった。12番を壊した場合、どちらの魚も尻びれが長くなる点は共通したが、メダカはさらに背びれも長くなった。
こうした結果などから、魚のひれの形成でもマウスと同じようにHox遺伝子が働いていると判断。同じ番号の遺伝子でも魚の種類によって、ひれを作る働きをしたり、逆に作らせない働きをしたりすることで、多様なひれの位置や長さが生まれると結論付けた。 川村准教授は「今後は遺伝子の働き方の違いがどう決まるのか調べたい。研究が進めば、ひれだけでなく筋肉の形を変え、養殖などに生かすこともできる」と語った。