「移籍問題は終わりではなく始まり」F1角田裕毅がRBと2025年の単年契約を結んだ裏事情とは?
ところが、角田とRB(正確には親会社のレッドブル)との間にはオプション契約があった。オプション契約とは、本契約の際に追加できる翌年に契約を延長できる権利のこと。RBが6月8日に発表したリリースにも「オプションを行使して、角田を確保した」と書かれていた。角田の今年の契約は昨年の9月下旬に発表され、その内容は1年契約と言われていたが、正確には「2024年の1年+2025年はオプション」というものだった。 この場合のオプションはチームが保持しており、チームがオプションを行使するかどうかを決めるまで、ドライバーはほかのチームと交渉はできない。 ただし、例外がある。他チームが違約金を支払って獲得に乗り出した場合だ。ドイツの自動車誌「アウトモーター・ウント・シュポルト」によれば、RBが角田に設定していたオプション解約金は500万ドル(約7億8650万円)だったという。 アウディがヒュルケンベルグ獲得に提示した年俸は500万ドルと言われているから、そのヒュルケンベルグよりも今年活躍している角田にアウディが資金を準備していたとしても不思議はない。 アウディからの触手を跳ね除けるには、レッドブルはオプションを行使するしかなかった。オプションには期限が設けられており、通常は8月末か9月末。それよりも数ヶ月前にオプションを行使したのには、それなりの理由があり、それがアウディだったと考えるのは当然だろう。 RBがオプションを行使したことで、角田の2025年は決まった。しかし、今回は2023年の9月に契約したときのオプションを行使しただけで、新たな契約ではない。つまり、角田とRBの契約は2025年末で切れる。そして、そこにはもうオプションは存在しない。 ということは現在、角田は完全なフリーエージェントであり、いまからでも2026年以降へ向けた交渉ができる。6月8日の発表は交渉の終了ではなく、むしろ2026年へ向けた「始まり」だと言える。 (文責・尾張正博/モータージャーナリスト)