梶裕貴が語る、『Unnamed Memory』の役作り「明らかになる真実を楽しみにしていただけたら」
TVアニメ『Unnamed Memory』Act.2が2025年1月より放送が開始される。「このライトノベルがすごい!2020」(宝島社刊)で単行本・ノベルズ部門と同部門新作で1位を獲得した人気作で、2024年4月に第1期であるAct.1が放送され、好評を博した。 【写真を見る】『Unnamed Memory』で自身の演じるヴァルトについて語る梶裕貴 本作は、絶大な力を操る5人の魔女が畏怖の象徴となった時代に、子孫を残せないという呪いを受けた大国ファルサスの王太子・オスカーが、幼い頃に受けた「子孫を残せない呪い」を解呪するために荒野の塔に棲む"青き月の魔女"ティナーシャを妻として迎え入れ、世界の運命を変えていく。 本作で謎の魔法士・ヴァルトを演じるのが梶裕貴だ。Act.1から参加していた梶は『Unnamed Memory』とどのように向き合い、ヴァルトを作り上げていったのか、話を聞いた。 ――『Unnamed Memory』という作品に対してはどのようなイメージを持っていましたか? 「ヴァルトを演じさせていただくにあたり初めて作品に触れたのですが、ものすこぐ緻密に設定が練られている名作だなと感じました。タイムリープ的要素があったり、専⾨⽤語が多かったりして理解するまでが難しかったりはするんですけど、そのぶん本当に丁寧に作られている物語だなと感動しましたね」 ――Act.1を振り返っていかがですか? 「とても綺麗な終わり⽅でしたよね。悲しみを抱えたままのキャラクターはいるものの、オスカーとティナーシャにとってはハッピーエンドと⾔える内容だったと思います。でも、この作品の本当の⾯⽩さは、RPGゲームのように『分岐した未来』や『違うエンディング』が描かれる部分だと思っているので、ようやくAct.2からが本番なのかなという気持ちもあります」 ――ヴァルトはAct.1では短いシーンでの出演でしたが、インパクトを残していましたね。 「そうなんです。前半は顔⾒せというか、本当に謎の⼈物という感じで終わっていて。⾃分の出ていない話数の台本は基本的にいただけないので、オンエアで初めて『あ、こういう物語になってくんだ』と把握しつつ、『果たしてヴァルトという⼈物は、ここからどのように物語に関わっていくのかな』と、楽しみながら⾒守っていた感じですね。きっと視聴者の皆さんも、ヴァルトがどのくらいの重要⼈物なのかわからない状態だったと思うんです(笑)。なので、今回ようやく⽇の⽬を⾒ることができるのでワクワクしています」 ――ヴァルトについてはどのように感じましたか? 「実は事前にいただいた資料には、わずか3⾏程度の説明⽂と設定画が添えられていただけだったんです。というか、現場で尋ねても詳しい情報はあまり教えてもらえず、『どうなっていくんだろう︖』と若⼲不安に思いながらのアフレコスタートでした(笑)。ミラリスとの関係性や、⾒⽅によっては悪役にも映る登場シーンについては、演じる側として『彼なりの正義』や『⽬的』を⼤切にしなければと意識していましたね。最初は全貌が⾒えていなかったこともあり、不安と楽しみが⼊り混じった気持ちだったんですが、物語の中で重要なポジションを担うことにはやりがいを感じましたし、しっかりと役割を果たせる形で作品に 参加したいという思いが強くありました」 ――Act.2でも第14話で出てきてからはしばらく登場シーンがないですよね 「残念ながらそうなんですよ(笑)。でも、第14話で登場することで、視聴者の⽅にも『あれで終わるわけがない』というのは伝わったと思うんです。ただヴァルトがどういう存在かまでは、まだ完全に⾒えていない状況なので、物語が進んでいくうちに明らかになる真実を楽しみにお待ちいただけたらなと思います」 ――先程のお話にもありましたが、ヴァルトは彼なりの正義感を持っているキャラクターでもあります。どのようにヴァルトを作り上げていったのでしょうか? 「終盤になるにつれて、彼の⽬的と使命が明かされるわけですが、⾎筋やミラリスへの思いも含めて、声や演技に反映させることが⼤切だと考えながら演じました。ただ、ティナーシャとオスカーから⾒ると、ヴァルトは得体の知れない存在で、彼らにとっては良くない未来へ導こうとする解せない相⼿でもある。その⼀⽅で、ヴァルトの視点では、どのような思いで彼らの前に現れて、何を成し遂げようとしているのかに焦点を当てる必要があったので、最後まで⼀貫した⼼構えで臨みましたね」 ――目線を変えると、印象がガラッと変わるキャラクターですよね 「そうですね。この作品の登場⼈物たちって、魔王が当たり前のように登場してくるような世界観で描かれているので、どのキャラクターも重要な役割を持っていて、みんな存在感が際⽴っているんですよ。そもそもティナーシャも伝説級の魔⼥ですし。他のキャラクターたちがそれぞれ存在意義を持ってる中で、ヴァルトもその⼀員として、実は役割に徹しているだけで、彼の⼈間らしい優しさや責任感、愛情を意識して演じました」 ――ヴァルトとミラリスの関係性についてはどう見ていますか? 「Act.1の少ない登場シーンの中でも、ヴァルトからミラリスへの思いや、ミラリスがヴァルトをどう感じているのか という思いが伝わってきていたと思うので、そこまで2⼈を結びつけるものは何なのか、その答えを深めていくのがAct.2の物語だと感じていて。⼈間としての優しさや責任感、愛情のうち、愛情に関しては、特にミラリスへの想いが強いのかなと思っています。もちろん、彼が背負っている使命感からくるものもあると思うのですが、それ以上に『ミラリスを悲しませたくない』『苦しい思いをさせたくない』という感情が⾮常に⼤きい。その点は特に意識して演じていました」 ――ミラリス役の楠木さんとは一緒に収録できたのでしょうか? 「残念ながら、⼀緒に録れたのは最初の⼀回だけなんです。以降は、何ブロックかに分かれてのアフレコでした。僕は基本的1⼈で収録することが多かったので、既に吹き込まれた皆さんの声を聞きながら進める形が多かったですかね」 ――最初の段階でこういう風に2人の関係性を作り上げていこうというお話はされましたか? 「実は、楠⽊さんとお会いするのは初めてだったので、挨拶をして『この間テレビで⾒かけましたよ』なんていう世間話をしつつ(笑)、楠⽊さんもミラリスの⽴ち位置や今後の展開について不安を感じていたので、2⼈でその話をしながら、役柄の認識をすり合わせていった感じです」 ――Act.1で印象に残っているシーンはありますか? 「ティナーシャとオスカーの2⼈は、全体を通して応援したくなるキャラクターだなと感じました。 ティナーシャは⾒れば⾒るほど可愛らしくて、まさに沼キャラだなと(笑)。硬い⼝調や気難しさがあるのに、近しい⼈に対しては砕けた⼝調になるのがすごくいいですよね。なので、印象に残っているのはやっぱり2⼈のシーンです。特にオスカーの⼈間⼒には感動しました。⾃分の呪いを解くためとはいえ、いきなり魔⼥と⾔われる⼈物に会いに⾏って、対等に向き合い、最後には⾃分の城に連れ帰ったわけじゃないですか。すごすぎません︖(笑)。ティナーシャがオスカーに⼼を開くのも、オスカーへの信頼感とカリスマ性から来るものだろうなと思っていますね」 取材・文=川崎龍也 撮影=MISUMI
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