ネット銀行の収益構造はメガバンクとどう違うのか?【坂本慎太郎の街歩き投資ラボ】
『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている! 【図表】住信SBIネット銀行の株価の値動き 今週の研究対象 ネット銀行(住信SBIネット銀行) メガバンクの凋落が止まらない一方で、ネット銀行は目覚ましい成長を遂げている。収益構造はどう違うのか? その謎を探ってみた! 助手 9月は株のインフルエンサーたちが、Xで「MEGA BIG」に言及することが多かったような。Jリーグの試合結果を当てるくじですよね。株とは異質ですが、なぜ? 坂本 MEGA BIGを7000万円以上も買ったインフルエンサーがいたから盛り上がったんですよ。 助手 大ばくちですね。 坂本 台風で試合がいくつか中止になって、期待値が売値を上回ってたんです。株もある意味、期待値で判断する部分があるから共通項はある。 助手 1口300円を7000万円分も買うのは大変だったでしょうね。 坂本 例えば住信SBIネット銀行なら1回で999口まで買える。まぁ、それでも大変だとは思うけど。 助手 へぇー、ネット銀行ってくじも買えるのか。いろんなサービスをやってるんですね。 坂本 ネットなら、お金が関係するサービスを一気通貫で提供できるからね。預金や送金はもちろん、証券、保険、住宅ローンとか。店舗運営の経費がかからないから、定期預金やローンの金利を利用者に有利に設定できるという強みもある。金利の良さと利便性から、ネット銀行各社の口座数はこの5年で倍に増えてメガバンクの半分ほどの規模にまで成長しました。近年は収益源も多様化しているし、単なる銀行業を超えたビジネスに進化しつつあると思います。 助手 投資先として面白そうですね。 坂本 住信SBIネット銀行は面白いよ。BaaS事業の伸びやグループ内のシナジーを考えれば期待できます。 助手 BaaS事業? 坂本 バンキング・アズ・ア・サービスの略ですよ。預金や決済、送金といった銀行機能を、銀行業以外の事業会社に提供するサービスです。従来の銀行は自社で銀行業用のシステムを開発して、直接サービスを提供していました。BaaSは銀行がシステム関連のインフラと機能を外部企業に提供し、借り手は自社サービスに銀行の機能を組み込む。 助手 一般企業が銀行機能を持って、なんの得があるんですか? 坂本 例えば、以前取り上げたJR東日本のJRE BANK。あれは楽天銀行の仕組みを使っています。JR東日本は銀行を持つことで沿線ユーザーの消費行動を把握して、不動産開発や物販のマーケティング精度を上げるのが狙いです。つまり、銀行機能で新たな顧客接点を持てば、新たな価値をつくり出せるかもしれない。 助手 なるほど。銀行はなんの得が? 坂本 まず当然、インフラ提供の手数料を収受できる。さらに提供先企業が認知度の高い企業なら、口座獲得や金融商品の販売を活性化できます。特に住信SBIは提供先企業を順調に増やしており、将来の成長につながるはずです。 助手 どんな企業が導入を? 坂本 日本航空、第一生命、京王電鉄、ヤマダデンキなど、すでに24社への提供が決まっているとか。 助手 顧客基盤が分厚い大手企業ばかりだから、口座数にも金融商品の販売にも追い風になるわけか! 坂本 そう。加えて住信SBIの場合は、SBIグループ各社から支援を受けられるのも有利です。住宅ローン販売のSBIアルヒは、従来の主力商品「フラット35」が振るわないから住信SBI独自の住宅ローンの販売に力を入れるはず。SBI証券からは、資産管理ニーズがある顧客の送客が期待できる。住信SBIのPERは15倍台で銀行業としては割高ですが、BaaSのプラットフォーマーと考えれば十分投資できるよ。 今週の実験結果 BaaS事業の顧客は大手企業ばかり。今後の伸びに期待できます! 構成/西田哲郎 撮影/榊 智朗