“ホラー映画の巨匠”もメガホン…名監督により実写化された「手塚治虫作品」の再現度
“マンガの神様”として数多くの名作を世に送り出した手塚治虫さん。今年3月には、映画監督の三池崇史さんがiPhoneのみを使用し、手塚さん最後の週刊誌連載作品である『ミッドナイト』を撮影。Apple Japanの YouTubeチャンネルにて公開したことが話題を呼んだ。 ■【画像】「そっくりすぎる!」24年ぶりの実写化『ブラック・ジャック』高橋一生さん&キリコ役の石橋静河さん■ 今回は、今もなお観る者の心を震わせる、手塚さん原作の実写映像作品たちについて見ていこう。
■実写とアニメの融合を試みた意欲作…『火の鳥』
手塚さんは数々の作品を手掛けてきた言わずと知れた漫画界の巨匠だが、彼にとってライフワークとなった長編作品といえば、“不死鳥”という幻想的な存在をテーマにさまざまな時代、世界の物語が描かれた『火の鳥』シリーズを思い出す人が多いだろう。 古代から未来、地球から宇宙とありとあらゆる世界に生きる人々が、タイトルにもなっている“火の鳥”がもたらす永遠の命を追い求め、それぞれの運命に翻弄されていく。 巨匠が人生をかけて描き続けた超大作シリーズだが、そのなかから古代ヤマタイ国を舞台とした“黎明篇”をベースとした実写版映画が、1978年に同タイトルで公開されている。 本作を手掛けたのは、娯楽映画からドキュメンタリーまで幅広く手掛ける名監督・市川崑さんだ。さらに俳優陣も、若山富三郎さん、草刈正雄さん、由美かおるさんといった豪華な面々が揃っている。 原作の流れを忠実に再現しているのはもちろんのこと、本作の特筆すべき点は漫画版に組み込まれた数々の“表現”を実写と融合した点だろう。 本作は随所でアニメーション表現をそのまま活用する斬新な手法が用いられており、動物たちが踊り出す、目のなかに怒りの炎が燃え上がる、原作お馴染みの“ヒョウタンツギ”が登場するなどなど……原作者である手塚さんをリスペクトした工夫が、至る箇所に組み込まれている。 まだCGが存在しない時代だったため、どれもこれもかなり挑戦的な演出だったが、やはり2次元と3次元を融合するのは容易なことではなく、監督自身もあらためて漫画作品を実写化することの難しさを痛感していたようだ。 人間の業や悲哀を描いた壮大な原作の実写化に挑戦してみせた、時代を先取った意欲作といえるだろう。