来日して「ひとり暮らし」 ウクライナ戦禍逃れた20歳が未来を模索する拠点 葛藤しながらも立ち止まらず前へ
「友人たちからは『マックスは気遣いの人だ』と言われることが多いですね。相手をよく観察し、その気持ちを汲み取って配慮するのが得意ですし、人と人をつなげるために積極的にコミュニケーションを取ることも好きです」 コミュニケーション上手なマックスさんには、広報の仕事は適職だ。しかしそんなマックスさんも、ウクライナと日本の状況にギャップを感じて苦しんだことがあるという。 「ウクライナでは、誰もが戦争の話をしている。それに対して日本では『昨日髪を切ったけれど、どうかな?』とか、そういう話をしているんです。話していることの深刻さが、違いますよね。
僕はそのことで苛立ったわけではないんです。でも当時は自分の心の中心がウクライナにあって、なかなか日本の友人の会話に共感できなかったことも事実です。 そういったギャップがあるのは、ロジカルに考えれば当然だと思います。毎日世界のどこかでむごいことが起こっている。今だってウクライナだけでなく、イスラエルとパレスチナの問題もあります。でも人間が関心を向けられることには限りがあって、世界中で起こる大変なことすべてに気を配っていたら、頭がおかしくなってしまう。
僕も、2年半日本に住んでいて、日常感じている物事の範囲は、ウクライナ人よりも日本人に近くなってきているかもしれません」 マックスさんは、眉を寄せて複雑な表情を浮かべた。 ■戦禍にいなくても、我々は同じ世界を生きている 「では、平和な環境にいる私たちが、戦争などの非常事態の影響下で苦しむ人々のために、何ができると思いますか?」と問いかけると、マックスさんは、日々考え続けている事柄を心から取り出すように、一語一語明確に答えた。
「大事だけど見逃されがちなこととして『当事者の置かれた状況を知る』ということがあります。例えば、なぜロシアが侵攻したのか? その背景には歴史があり、ソ連の時代に遡る話なのです。 そうしたことを理解したうえで、今の問題を解決するためにはどうしたらいいのか、社会として未来のために何をすべきかを、考える必要があるのではないでしょうか。 ただ、皆がすべてを深く知る必要はないと思います。インターネットのまとめサイトで、知識を仕入れたっていい。それだけでも、現地の人々にとってはありがたいし、自身の意見も形成されていくはずです。