【ふくしま復興臨時支局・矢祭町】算数・数学得意な矢祭に 先生の“師匠”募集 町教委、教え方など伝授
算数・数学が得意な福島県矢祭町へ―。町教委は年内にも、小中学生の学力向上と教員の指導力アップのために、数学の専門知識を持つ大学教授らを「学習官」として迎え入れる。9月から全国公募し、日常的に授業の進め方を助言してもらう。さらに模範授業も実施する。こうした取り組みは珍しく、保護者からは期待の声が上がっている。 町と連携協定を結んでいる福島大の森本明教授(数学教育学)のアドバイスを受け、科学技術振興機構(JST)の求人情報サイトを通じて人材を募る。森本教授によると、同サイトは数学者らの転職に定評があるという。 学習官は会計年度任用職員の指導主事となり、任期は1年。最長3年まで延長できる。教育専門誌などに執筆している大学教授、小中学校の教員免許を持ち指導主事の経験がある人らが対象となる。小論文や面接などの試験を経て採用される。 小学6年生と中学3年生対象の全国学力テストで、町内の成績は全国平均を下回る傾向にある。県教育庁義務教育課から派遣される「研修支援チーム」が県内各地の学校で改善策を講じているが、チームの人員は3人のみ。対応力には限界があった。
「打開策を打ち出し、矢祭ならではの教育を実現しなければならない」。菊池篤志町教育長は授業の在り方を見直す必要があると判断し、学習官を起用した対策を決めた。 学習官は町内に一つずつある小学校と中学校に通い、教え方のポイントや理解度を深める授業の構成などを検討する。町教委の職員と連携し、総合的な学力向上施策を作り上げる。 きめ細かな指導は、特に若手教職員の刺激になる。町内小中学校の教職員のうち、多くが30代以下という。学習官の豊富な経験が、スキルアップにつながると見込まれる。矢祭中の安部孝校長は教職員の約7割が20代から30代だとした上で「日頃から授業研究などに取り組んでいる。学習官の活躍により、指導力が一層向上するだろう」と話している。 さらに町外に異動した先でも習得したスキルを生かすことができ、他市町村に効果が波及する可能性がある。 小学生2人を含む3人の子を育てている会社役員押田洋平さん(46)は「児童生徒が今まで以上に自らの成長を感じられるような授業をしてほしい」と語った。