中国の習主席、自由貿易擁護者の役割演じる-トランプ氏に対抗
(ブルームバーグ): トランプ次期米大統領が世界各国・地域に課税すると予告する中、中国の習近平国家主席は再び国際貿易システムの擁護者としての地位確立を急いでいる。
ペルーのリマで開催されているアジア太平洋経済協力会議(APEC)の最高経営責任者(CEO)サミットで15日、習氏の演説が壇上で代読された。
習氏は、保護主義の拡大で世界経済の分断が進みつつあり、「厳しい試練」に直面していると警告。世界は「新たな混乱と変化の時代に突入した」と強調した。
習氏にとって、これは2017年にトランプ氏が初めて政権に就いた時に演じた役割だ。当時、習氏はスイスのダボスで開催された世界経済フォーラムで世界のビジネスエリートに対し、「双方に痛手と損失をもたらす」として貿易戦争と保護主義を拒否するよう求めた。
トランプ氏は任期中に中国に対し懲罰的な関税を課し、その大半はバイデン政権でも維持された。来年1月の復権に備えるトランプ氏は、中国からの輸入品に60%の関税、それ以外の国・地域にも10-20%の関税を課す姿勢を示している。
そうした普遍的な関税の脅威は、トランプ氏との厳しい交渉に身構える各国・地域政府と関係を改善する新たな機会を習氏にもたらしている。15日に習氏はタイ、シンガポール、チリ、韓国、日本、ニュージーランドの各国首脳と個別に会談。いずれもアジア太平洋地域における米国の同盟国で安全保障上のパートナーだ。
ニュージーランドのラクソン首相はAPECのCEOサミットで「われわれは力によるシステムではなく、ルールによるシステムの確保に注力している」とした上で、「規模にかかわらず、国際ルールに基づく秩序を通じて各国が世界の中で進んでいけるようにしたい」と強調した。
習氏は会談で忙しかったが、バイデン大統領は余裕のあるスケジュールをこなした。石破茂首相、韓国の尹錫悦大統領との3カ国首脳会談に加え、ペルーのボルアルテ大統領とも会談した。一方、習氏は16日にバイデン大統領と最後の首脳会談に臨む予定。