漫画の実写化で一番大事なのは「原作ファンを裏切らないこと」 堤幸彦監督が「夏目アラタの結婚」で黒島結菜に求めたこととは?
柳楽優弥と黒島結菜の共演で人気漫画を実写映画化した「夏目アラタの結婚」が、9月6日に公開される。メガホンをとったのは、数多くの実写化作品を成功させてきた堤幸彦監督。監督自らこれまで手掛けた作品の中で最も「危険で切ない」映画と語る本作について、映画.comがコメントを独占入手した。 【動画】「夏目アラタの結婚」真珠スペシャルPV 原作は、「医龍 Team Medical Dragon」シリーズなどで知られる乃木坂太郎氏による累計260万部発行のベストセラーコミックス。児童相談所職員の夏目アラタが、“品川ピエロ”の異名をもつ連続殺人犯の死刑囚・品川真珠にプロポーズすることから始まる“獄中サスペンス”を描く。主人公のアラタを柳楽、死刑囚の真珠を黒島がそれぞれ演じた。 「TRICK」や「SPEC」シリーズなどを手掛けた堤監督は、「池袋ウエストゲートパーク」や「十二人の死にたい子どもたち」といった小説の実写化に加えて、「20世紀少年」や「BECK」など漫画の実写化も成功させてきた。 堤監督は、さまざまな作品の実写化を成功させてきたポイントについて「漫画原作の場合は、まず必ずその原作ファンを裏切らないということですね」と話す。一方で、「同時に映画として、作品として別の見え方をし、かつ漫画では得られなかったその立体感と同時に、見ている方の心を揺り動かしたいなと思うんです」とその意義を語った。 堤監督作品史上最も「危険で切ない」映画と自ら語る本作を実写化した理由について、「まず絵がとてもスタイリッシュで面白い。そして同時に色々な人間の表面と裏面がすごくよく表されていて、一筋縄ではいかないなという印象を持ちました。一筋縄ではいかないものに対しては挑戦したいという気持ちになるものでして、素晴らしい題材だなと思って引き受けました」と明かす。 「主人公の夏目アラタが意外と真っ直ぐなキャラクターなんです。ちょっと突っ張っているけども心根は優しい男が、一面的に描かれるのではなくて、色々重層的に描かれていく。同時に、品川真珠という死刑囚が起こした連続殺人事件から、彼女の秘密に迫っていくことで、ホラー的な要素もありながらさらにミステリアスさとかわいらしさが増していく。相反することがビューッと同時に広がっていく事に対してすごく魅力を感じました」と原作のもつ魅力を語った。 製作段階では原作が連載中だったこともあり、原作者の乃木坂氏と本作のテーマやキャラクターの背景についてじっくりとミーティングする時間を設けた上で、製作が進められていった。予告映像を見た原作ファンからは「漫画をここまで実写で表現できるのか…!と驚きがすごい!!!」「原作そのもの!!」などの声が上がり、中でも主人公のアラタからプロポーズされるヒロインを演じた黒島に注目が集まっている。 堤監督は、「クランクインする前に、黒島さんには『申し訳ないけど、あなたのイメージを大きく崩すことになる』という話はしました」と明かす。連続殺人事件の犯人で死刑囚というかつてないヒロイン像を作り上げるために、これまでの黒島自身のイメージを壊す必要があったという。 黒島は、「(真珠は)特殊な役だったのでちょっと迷いはありましたが、でも『堤監督を信頼してやれば大丈夫!』という、堤さんへの信頼感があったので頑張ってやってみようと思って受けました」と当時の心境を語っている。 堤監督は、「とにかく虚実入り乱れるということを、映画として実体化することに今回は挑戦してみました。これはどこまで正解の映像なのか、あるいは誰かの想像力の賜物なのか、観ているお客さんもある種の混乱に陥ると思いますし、その混乱の後導き出される真実があることで、虚実入り乱れるというポイントがとても効果的に働くのではないかと思っています」と手ごたえを語る。 そして、「お客様は真珠に騙されると同時に、映画に騙されていただきたい。そのあげくに掴むものが、あまりにも美しいのではないかという、非常に難易度の高い映画なので、ぜひ期待していただきたいと思います」と自信をのぞかせた。 「夏目アラタの結婚」は9月6日より全国公開。