中国がビザなし入国許可の範囲を続々拡大、関係冷え込んでいた韓国まで…なのに日本は除外、なぜか?
■ どの国よりもノービザ入国の早期再開を求めてきた日本 日本外務省の関係者によると、中国側の説明は当初、「わが国は相互主義に基づくビザ免除措置が原則」というものだったという。ところが、「一方的なノービザ入国」を認める国が出てくると、「ヨーロッパから順次、ノービザ入国を進めていく」という説明に変わったという。 しかしすでに、ヨーロッパ以外でも、マレーシア、ニュージーランド、オーストラリアで「一方的なノービザ入国」を認めており、今回さらに4カ国目の韓国が加わった。韓国までノービザでの入国を認めたのに、日本だけ頑なに拒否しているところが、「秋の珍事」なのだ。 実際この間、日本は中国側に、「どの国よりも声高に」ノービザ入国の早期再開を要求してきた。昨年11月16日の岸田文雄首相と習近平主席の首脳会談、今年5月26日の岸田首相と李強首相の首脳会談、そして、先月10日の石破茂首相と李強首相の首脳会談などの場でだ。 他にも、今年8月28日の二階俊博日中友好議員連盟会長(元自民党幹事長)と趙楽際全国人民代表大会常務委員長(共産党序列3位の国会議長)の会談から、11月4日の新浪剛史経済同友会代表幹事と韓正国家副主席との会談に至るまで、国会議員や経済団体幹部も、重ねて要求してきた。ところが中国側は、「両国は今後とも交流を深めていかねばならない」(韓正副主席の回答)などと、トボケた回答に終始しているのである。
これは、一体なぜなのか? 思うに、日本から見て「善意の解釈」と「悪意の解釈」が成り立つのではないか。 ■ 石破-習近平会談で許可出るか まず「善意の解釈」としては、習近平主席から石破首相への「首相就任プレゼント」として、発表する予定でいるというものだ。 石破首相は11月4日、東京都内で開かれた地元の鳥取県の関係者が集まった会合で、こう述べた。 「今月中旬にペルーで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議などに出席したい。そして現地で、中国の習近平国家主席やアメリカのバイデン大統領との首脳会談を行いたい」 11月15日と16日に、ペルーの首都リマでAPEC首脳会議が行われ、同18日と19日には、ブラジルのリオデジャネイロでG20(主要国・地域)首脳会議が行われる。このいずれかの場で日中首脳会談を行い、習主席が石破首相に対して直接、日本人のノービザ入国許可を伝える――これが善意の解釈だ。 たしかに、習近平主席が主要国の首脳と会談を行う前には、中国の外交トップ(現在は王毅外相)が、事前にその国の外交責任者と細部を詰める。今回は、11月4日に北京で、ランチを挟んで4時間半にわたって、秋葉剛男国家安全保障局長と王毅外相の会談が行われた。すでに「準備」は整っているのだ。 一方、「悪意の解釈」とは、先の総選挙で大敗を喫し、支持率急落中の石破政権を軽視しているという見方だ。「どうせ来年春の予算成立時か、夏の参院選までの短期政権だろう」と中国側が判断し、いまは日本にあまり「深入り」しないようにしているということだ。 韓国は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の任期は、あと2年半保証されている。加えて、中国税関総署の発表によれば、今年1月~9月の貿易額は、韓国とが2400億ドル(前年同期比4.5%増)で、日本とが2245億ドル(同4.9%減)。すでに貿易上も、韓国の方が日本より重要なのだ。 いずれにせよ、今月中旬の日中首脳会談で、はっきりするだろう。その時の習近平主席まで、日本人のビザ免除に「ゼロ回答」ならば、日本も中国との関係を再考した方がよいかもしれない。
近藤 大介