札幌では安心できない…ニセコにあって札幌にない海外富裕層を獲得するために必要なもの
今や世界中から富裕層がこぞって訪れる冬の高級リゾート地となった北海道ニセコ。どうやってニセコはインバウンドをものにしたのか。海外の富裕層を取り込む外国資本の戦略、日本の観光に足りていないものとは何なのか。ニセコの成功の背景を、リゾート地・富裕層ビジネス・不動産投資の知見をもつ筆者が、これらの謎をひも解く。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション *『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』(高橋克英著)より抜粋してお届けする。 『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』連載第4回 『「海外富裕層」が真に求めるもの…冬のリゾート、ニセコがウケた裏側にある富裕層の考え方』より続く
ニセコと札幌、知られざる差異
海外スキーリゾートと都市でいうと、ニセコと札幌は、カナダにおけるウィスラーとバンクーバー、米国におけるベイルとデンバーといった関係であろうか。 札幌は言わずと知れた北海道の中心都市で、人口約200万人の大都会だ。並みの地方中核都市ではない。市内には観光地が多数あり、繁華街も有名であり、食の豊富さはいうまでもない。実はスキーリゾートとしても有数であり、札幌国際スキー場やサッポロテイネスキー場などがあり、札幌藻岩山スキー場やさっぽろばんけいスキー場は市中心部から車で約20分という近さだ。最も遠い札幌国際スキー場でも車で約1時間だ。 このように札幌は誰もが認める観光都市であり、観光客向けの宿泊施設も数多くあるのだが、実は札幌には富裕層向けの高級ホテルがない。 ミシュランガイド北海道(2017年度)でも札幌に5つ星ホテルはなく、北海道内にはヒルトンニセコビレッジを含め7軒ある4つ星ホテルも、札幌市内にはJRタワーホテル日航札幌の1軒しかない。
世界的ホテルブランドの欠如
外資系ラグジュアリーブランドホテルもない。リッツ・カールトンやパークハイアットはむろん、シェラトンやヒルトンも今のところない。 2023年にヒルトン札幌パークホテルが開業予定であるぐらいだ。唯一、新札幌にあったシェラトン札幌は、新札幌という立地の悪さもあり、2014年10月に撤退、スマイルホテルグループに売却され、現在はエミシア札幌となっている。日本国内の他の主要都市やリゾート地と比べても、札幌のホテルグレードは見劣りする。 むろん、函館や小樽、旭川、帯広にもこうした世界ブランドのホテルは見当たらない。少なくとも国際的な知名度と安心感があるヒルトン、シェラトンクラスの高級ホテルが札幌にあれば、安心して泊まろうとする外国人観光客は多いのではないだろうか。 日本にも帝国ホテル、ホテルオークラ、プリンスホテルや東急ホテルなど素晴らしいホテルがあるのはもちろん知っている。 しかし、日本のホテルブランドではダメなのだ。外資系メジャーのブランドという点が彼らにとって安心な宿泊施設であり、ポイントとなるのだ。 『日本の観光はニセコから学べ…「ゆるキャラやご当地グルメ」など、あれもこれも入れる「幕の内弁当」政策ではダメな納得の理由』へ続く
高橋 克英(金融アナリスト)