BBC日本語版サイト開設、英国の伝統的報道機関は国際報道をどう伝えるか?
THE PAGE
「国際ニュースが読まれないのは日本だけでなく英米も同じなんですよ」。BBC日本語版サイトの編集に携わるデジタル・エディターの加藤祐子氏はそう話す。海外のメディアでもシリア難民の問題がクローズアップされているのは、国内問題として浮上してきたから。自分ごとにならないと、そのニュースに関心を向けられないのは、洋の東西を問わないという。 【アーカイブ動画】BBC日本語版サイト開設 津田大介氏らがトークイベント
国際報道に対する日本の関心は上向き
BBCワールド ジャパンは15日、日本語版ニュースサイトを立ち上げた。インターネットに限らず、新聞やテレビといった報道メディアに携わる関係者は皆口をそろえて「国際報道はなかなか伝わらない」とこぼす。それにもかかわらず、BBCがこの時期に日本語版を立ち上げる理由について、渡辺雄二マネージング・ダイレクターはこう話す。「将来的に悲観はしていません。主要8か国を対象にしたBBCの調査では、国際ニュースに対する日本の関心は上向きです。テロリズムや環境といったニュースに関心は高い」。 平和で安心、安全と言われる日本でも、グローバルな視点から見ると、これらの危機は日本人にとって自分ごとになりつつある時代になっているのかもしれない。渡辺氏は「市井ジャーナリズム、つまりSNSで瞬時に情報が発信される時代のなかで、伝統的メディアが果たす役割があります。それは、情報が正しいかどうかを検証し、見解を加えて報道するという使命です」と続ける。英国のBBCサイトには日本から月間800万ほどのアクセスがあるといい、「この部分の声を無視してはいけない」とも。
硬軟織り交ぜて分かりやすく
BBC日本語版サイトは、新たに日本に取材拠点を作るのではない。BBCサイトに掲載される一日500本のニュースのうち、日本に伝える価値のある記事を選別し、日本語に翻訳することに徹する。加藤氏が強調するのは、世界100か国70支局にいる2000人の特派員のほか、BBCに所属するあらゆるスタッフが報道している目や耳の存在だ。「日本をとりまく世界とはこういうところだということを伝え、日本の外の考え方、海外がどう日本を思っているか、捉えているかを伝えるための声の一つがBBCなのです」。 加藤氏は、CNN日本語版やgooニュースの編集に携わってきた。CNN時代に意識してきたのは、日本のメディアを見ていただけでは気づかないニュース、日本語メディアとは違う視点のハードニュースだった。ネットのポータルサイトであるgooニュースでは、ユーザーのニーズに合わせて「スポーツや経済などいろんなジャンルを楽しんでもらい、その日1日の動きが分かる編成を目指してきた。 伝統的な報道機関ではハードニュースを、ポータルサイトでは硬軟織り交ぜたニュースの両方を取り扱った経験がある加藤氏は「国際ニュースが自分に関わることだと思ってもらえれば、自分の仕事は成功だと思っています」と話す。 トルコのアンカラで97人が亡くなったテロ事件や、シリアなど中東からヨーロッパに押し寄せる難民の問題に触れながら、「死んだ人の数だけがニュースではないし、硬いだけがニュースではありません。フレンチブルドッグが熊を追い返したニュースがあってもいい」。