多彩なソングライティングを展開したReiの新作『VOICE』
──日本のカルチャーが好きなことで知られるアメリカのシンガーシングライター、Ginger Rootを「Love is Beautiful」でフィーチャーしたのはどうしてだったのでしょう? 彼が「Rikki」というアルバムを出した頃から好きになり、聴くようになりました。インスタをフォローしたら、彼も私が細野晴臣さんとコラボレーションしたことをきっかけに私のことを知ってくださっていて、ネットを通じて交流が生まれました。来日した時にコンサートに行かせてもらい、そこで「スタジオに入って遊びでセッションしよう」という話になりました。「せっかくだったら曲の題材があった方が楽しめるかな」と思い、私が持っていった曲の断片をもとにいろいろとアレンジして、その流れでレコーディングまでしてしまいました。 ──そうだったんですね。「Love is Beautiful」のミュージックビデオには楽曲でベースを弾いているハマ・オカモトさんも出演されています。 スタジオに入った時に「ベースがいた方がいいね」という話になって、共通のお友達であるハマさんを誘ってみたんです。なので、ミュージックビデオに参加していただくのも自然な流れでした。Ginger Rootはミュージックビデオにも力を入れているアーティストなので、一緒にストーリーラインを考えさせてもらい、「Ginger Rootが幻のアーティストのレコードを日本で探してる」という設定にしました。 ──Reiさんがギタープリンセスという肩書の幻のアーティストで、Ginger Rootは自分自身、ハマ・オカモトさんがドーナツショップのオーナーという人物設定です。 “円”がMVのテーマなんです。映像を回すカットが多いですし、最初に訪れたレコードショップに、最後にまた帰っていく。ド―ナツ盤から連想して、ドーナツショップのオーナーをハマさんに演じてもらいました。 ──歌詞は日本語と英語が混在していますが、「愛はすばらしいものね!」とか「大好きなキモチ 生きてる証」といったフレーズがあり、これまでのReiさんの楽曲の中でも一番と言っていいほど幸せや「好き」という気持ちに溢れていると感じました。 深く傷つく出来事があって、それをきっかけに作った曲です。好きなものを汚されたり、傷つけられたりするとすごく悲しいですよね。人それぞれ大事なものはあると思うんです。生きる原動力には、「美味しいものを食べたい」「有名になりたい」「家族を幸せにしたい」など、色んな理由があると思うんですが、根源には「好き」という気持ちがあると思いました。例えば「お金を稼ぎたい」と思っている人でも、それを辿っていくと「大きな家に住みたい」という“好き”という気持ちがあったりします。何かと効率に捉われてしまう時代ではありますが、“好き”という気持ちを失わなくても済むような環境に自分を置いて生きてほしいという気持ちが込められています。 ──ミニアルバムのアートワークも素敵です。初回限定盤のジャケットでは、花柄のドレスを着用したReiさんがブドウが入っている青いギターを掲げ、首回りに蝶が止まった写真が使われています。どんなイメージだったんでしょう? 毎回作品を作る度にギターのテーマを決めています。今回はFenderのDuo Sonic 2というギターです。「Love is Beautiful」のミュージックビデオの撮影ではギターにライオンのぬいぐるみを入れて、ピックアップガードを蛍光オレンジにしていました。その後、アルバムの撮影のためにピックアップガードを白に変え、中にブドウを入れました。ひとつのブドウの房にいろいろな粒がついているところがアルバムに通じると思ったんです。それと、私の名前はReiで、“グレイプ(葡萄)”という単語の中に“Rei”が入っているという理由もありました。衣装は、MAIMI SADAIさんという方が作っているモダンゴシック調のオートクチュールです。声は喉から出るので、蝶々が歌声に引き寄せられて首元まで飛んできたというストーリーが込められています。アートワークは興味を持っていただくひとつのきっかけだと思うので、今回も何年も前からご一緒させていただいてるビジュアルチームと話し合って決めました。西洋絵画のような普遍的で美しいものを作れたらいいなという気持ちがありました。 ──確かに西洋絵画を想起させます。好きな画家はいらっしゃいますか? ヒエロニムス・ボスやマウリッツ・エッシャーのようなひねりの利いた絵は好きです。あと、インダストリアルデザインに興味があって、ガソリンスタンドのSHELLのロゴを手がけたことで知られるレイモンド・ローウィのデザインには影響を受けています。毎作ブックレットのデザインを自分で手掛けていますが、その構図などからローウィの影響が垣間見えるかもしれません。 ──作品を出す際にはアートワークが付随してきますが、そこにも楽しみがありますか? そうですね。ミュージシャンにはいろいろなタイプがいて、音楽だけが突出していて、それ以外には興味がない方もいます。それはそれですごくかっこいい。一方で、自分の表現にくまなく手を加えているものも素敵だと感じます。私はコム デ ギャルソンが好きなんですが、コム デ ギャルソンのアイテムにはどんなに小さいディテールにも気が配られているように感じます。そういう芸術に惹かれるんです。音楽はエンターテインメントでもありますが、わたしは自分という存在の延命治療として、作品をより長く生きるものにするためにアートワークにも力を注ぎたいと思っています。 ーーーーーーーーー 『VOICE』 発売中 初回限定盤(CD+DVD)¥5,280(通常盤 ¥2,530) 全7曲収録 初回盤のDVDにはMUSIC FILM #6やReiny Friday -Rei & Friends- vol.14 “with QUILT friends”のライブ映像が収録されている。 ▼ツアー情報 Rei Release Tour 2024 “VOICE MESSAGE” 2月11日(日) 札幌:ぺニーレーン24 2月22日(木) 名古屋:THE BOTTOM LINE 2月23日(祝・金) 大阪:BIGCAT 2月25日(日) 福岡:BEAT STATION 3月1日(金) 東京:SHIBUYA CLUB QUATTRO ーーーーーーーーー ●Rei 卓越したギタープレイとヴォーカルをもつ、シンガー・ソングライター/ギタリスト。幼少期をNY で過ごし、4歳よりクラシックギターをはじめ、5 歳でブルーズに出会い、ジャンルを超えた独自の音楽を作り始める。 2015 年2 月、長岡亮介(ペトロールズ)を共同プロデュースに迎え、1st Mini Album『BLU』をリリース。FUJI ROCK FESTIVAL、SUMMER SONIC、RISING SUN ROCK FESTIVAL、SXSW Music Festival、JAVA JAZZ Festival、Les Eurockeennes、Heineken Jazzaldia などの国内外のフェスに多数出演。2017 年秋、日本人ミュージシャン初となる「TED NYC」でライヴパフォーマンスを行った。2021 年2 月、1st Album『REI』のInternational Edition が、US/Verve Forecast レーベルより全世界配信。2022 年4 月、コラボレーション・アルバム“QUILT”をリリース。細野晴臣、山崎まさよし、長岡亮介、藤原さくら、渡辺香津美など親交のあるミュージシャンが参加。8 月にはForbes JAPAN 誌が発表した「世界を変える30 歳未満30 人の日本人」の一人に選出される。2023 年6 月、楽器メーカー「Fender」とパートナーシップ契約を結ぶ。7 月にはCory Wong のゲスト・アクトとしてFUJI ROCK FESTIVALでパフォーマンスを行い、話題を呼んだ。 Text_Kaori Komatsu Photo_Wataru Kitao
GINZA