【動画】通天閣が今秋の免震改修実施へ 「脚部改修」でタワーの印象変えず/大阪
大阪のシンボルとして知られる大阪市浪速区の「通天閣」が3日、今秋から免震改修などを進める「通天閣『NEXT210(ツーテン)』プロジェクト」の立ち上げを発表した。現段階でも鉄骨の劣化はないものの、予測される大きな地震に備えての工事を決定。国の登録有形文化財であることを配慮し、タワーでは世界でも類をみない「脚部改修」という形で、タワーの印象を変えない免震改修を行うという。また、初代・通天閣にあった「エントランス吹き抜け大天井」も復刻させる。工事は2015年7月の完成を目指し10月から開始予定。
現在の通天閣は1956年に地元の有志らが動き再建
通天閣は初代が1912年に建設されたが、第2次世界大戦中の1943年、火災により消失。1956年に地元の有志らが再建に動き、東京タワーなどを手がけた内藤多仲の設計で現在の2代目が完成した。大阪のシンボルとして地元に愛され、2012年度には年間入場者数が53年ぶりに130万人を超えるなど、関西を代表する観光スポットとしての地位を確立している。 2代目建設から今年で58年。開業時から振動計測が継続的に実施し、鉄骨造建物として構造的な劣化は進んでいなかったが、最新の耐震診断で「塔の一部が変形する恐れ」があることが分かったという。いずれ起こるとされる南海トラフ巨大地震などの巨大地震発生時のことも考え、同プロジェクトの立ち上げを決めた。
塔の4本の基礎部分に免震ゴム組み入れ
プロジェクト監修指導者には、大阪大学大学院、工学研究科の宮本裕司教授を迎えた。宮本教授が2011年、13年の2回にわたって地震防災研究の一環として通天閣の震動計測を行ったことがきっかけで、このプロジェクトが立ち上がったという。設計、施工は竹中工務店が担当。塔の4本の基礎部分に地震の揺れを吸収する免震ゴムを組み入れ、直下型地震に対して地面から伝わる揺れを小さくする。脚部の改修という最小限の工事で上部タワーをそのまま残す世界でも類をみない工事だという。
初代の「エントランス吹き抜け大天井」を復刻
また、耐震工事とともに脚部の「エントランス吹き抜け大天井」を復刻。これは初代通天閣にあった天井画を復刻させるもので、初代に広告を出していた大阪市西区の化粧品メーカー「クラブコスメチックス」が天井画を寄贈する。文化と娯楽の発信拠点という原点を見つめなおし未来へと継承していくのがねらいだという。 通天閣の高井副社長は「今回の工事では安全性だけでなく、お客様に安心も提供できる。これまでの100年、そして110年後も大阪と一緒に繁栄していき、未来へ継承されるプロジェクトを成功させたい」などと話している。