「EVは終わった」「ハイブリッドのひとり勝ち」という誤解…ニューヨーク在住記者が見た「アメリカEVの現実」
「ハイブリッドのひとり勝ち」は正しいのか?
日本では「2023年アメリカでのEV伸び率の低下」を誤解し、「アメリカでEVはまるで売れていない」「EVシフトは終わった」「ハイブリッドのひとり勝ち」と思っている日本人が一定数いる。しかし、ニューヨークからアメリカの自動車事情を日本に送り続けて8年目となる筆者からすると、それはアメリカでの事実とは言えない。 【写真】大胆な水着姿に全米騒然…トランプ前大統領の「娘の美貌」がヤバすぎる! アメリカでのEV販売はいまなお好調で、昨年の2023年は、アメリカで”初めて”EV販売台数が年間100万台を超えた(日本は約8万8千台)。アメリカではただ単に自動車メーカーとアナリストによる予想で「2023年にEVの販売はさらに伸びる」とされていたが、それほど伸びなかっただけの話にすぎない。 日本でよく見る「アメリカのEV終焉」調の記事だが、アメリカの2024年1月のEV販売台数は約8万9千台だった。アメリカでのわずか1ヶ月で、昨年の日本での年間EV販売台数を超えている。しかも、前年比は15%増だった(SPグローバル・モビリティ)。 アメリカのEVは、毎年前年比で50%を超えて伸びてきた。だが、今年は前年比15%~20%増程度になるのかもしれない。今年のEV販売シェアは10%予想とされている(Coxオートモービル)。すなわち、EVは増えたものの期待以下だった。だからテスラの株価が下がった。それでも、毎年EV販売台数は増え続けている。アメリカでは2022年と比べて2023年にEV販売台数が減ったわけではない。多くの日本人は、自らの考えや願望を反映させるので「EVは終わった」と読み間違えるのだろう。
ガソリン車と電動車のシェア推移
1つのグラフがある。文字を読んでもまだ理解できない人は、そのグラフを見れば一目瞭然だ。それはアメリカのエネルギー省のエネルギー情報局が出したデータで、ガソリン車と電動車(ハイブリッド・EV・プラグインハイブリッド)の2つに分け、2014年から2023年までの販売シェアをグラフ化したものだ。このグラフを見れば、アメリカでのガソリン車と電動車がどれくらいのシェアで占めているのか誰でもわかる。 そのグラフについて簡単に書くと、およそ10年前の2014年の時点のアメリカでは、ほぼ100%がガソリン車だった。そこから2023年末には、ガソリン車のシェアは84%に下がった。そして電動車(ハイブリッド・EV・プラグインハイブリッド)は、2014年時点ではほぼ0%だったが、2023年末には16%に上がった。16%の内訳は、EVとハイブリッドのシェアがそれぞれ7%くらいのところを並走、残りをプラグインハイブリッドが埋めている。 これがアメリカの現実となる。現在たった16%の電動車シェアのうち7%程度同士であるハイブリッドやEVという見方もできるし、アメリカではまだまだガソリン車が84%も買われているという見方もできる。 「ハイブリッド=日本」「EV=海外勢」と思うから、見方が変わるのだ。ハイブリッドはフォードなどからも販売されている。グラフでもアメリカのシェアは「ハイブリッドのひとり勝ち」でもなんでもない。筆者も同じ日本人として、そう思いたい気持ちはわからないでもないが、アメリカでの事実は違う。 今後アメリカでは、EVの伸び率の鈍化はあっても、EVとハイブリッドのシェアは並走し、ガソリン車は減り続ける。ガソリン車のシェアをEVやハイブリッドなどの電動車が奪い続ける、と言ってもいいだろう。結局のところ、アメリカの実態を言えば「ガソリン車が減っている」ということになる。