<インド>ゴミに埋もれる町 ── 高橋邦典フォト・ジャーナル
悲しいかな、インドと聞いて連想してしまうもののひとつが「ゴミ」だ。その不衛生さや悪臭に加え、人々のモラルの低さにはしばしば閉口させられてしまう。 歩きながらは勿論、車の窓やときには家の窓からまで、ゴミのポイ捨ては日常茶飯事。それがよくないことだという意識が全くないので、咎める人もない。大人がこの有様だから、子供たちは言わずもがな、だ。 都市部では急激な発展が進んでいるが、一歩町を出れば、まだまだインドには多くの自然が残っている。 しかしどこへ行ってもがっかりさせられるのは、無数に散らばるビニール袋やペットボトル。どんなに美しい場所も、僕にとってはもうそれだけで興ざめなのに、地元民も国内旅行者もそんなことは全く気にはならないようで、相も変わらずあっちでポイ、こっちでポイと捨てまくる。 13億近い人口を抱えるこの国が、日々吐き出すゴミの量は莫大なものだ。リサイクルなどゴミ処理システムの整備は勿論だが、もっと重要なのは国民の意識改革だろう。子供の教育を徹底させて将来のゴミ問題に対処していかない限り、そのうちインド人はみな、ゴミのなかで暮らす民になってしまうんじゃないかと危惧してしまう。いや、もうすでにそんな人々も大勢いるのだけれど…。 (2012年12月) ---------------- 高橋邦典 フォトジャーナリスト 宮城県仙台市生まれ。1990年に渡米。米新聞社でフォトグラファーとして勤務後、2009年よりフリーランスとしてインドに拠点を移す。アフガニスタン、イラク、リベリア、リビアなどの紛争地を取材。著書に「ぼくの見た戦争_2003年イラク」、「『あの日』のこと」(いずれもポプラ社)、「フレームズ・オブ・ライフ」(長崎出版)などがある。ワールド・プレス・フォト、POYiをはじめとして、受賞多数。 Copyright (C) Kuni Takahashi. All Rights Reserved.