菊地凛子、代表作『バベル』出演時に監督からもらった坂本龍一のCDとは?
音楽の力でシーンの意味合いが違ったものになる
イベントの中では菊地が選んだ楽曲をジュークボックスで流す一幕もあった。 菊地:俳優としてのキャリアをこじ開けてもらった、2006年公開の映画『バベル(Babel)』という海外作品があるんですけど、監督のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥは、DJもされている方で、音楽にも詳しいんです。そんな中で、役をいただいたときに、12曲ほど収録された、CDをもらいました。その中の1曲が、実際に映画でも使用された坂本龍一さんの『美貌の青空(Bibo no Aozora)』でした。 「この曲は、君の役(綿谷千恵子)に合った曲だから、よく聴いておくように」と言われました。耳から伝わってくる世界の中に、自らが入っていくような体験をさせてもらいながら、役のイメージを固めていきました。映画が完成すると、『美貌の青空(Bibo no Aozora)』も作品の中で、すごく印象的な役割を果たしていました。 現場入りする前に映画監督から、役のイメージに合う音楽を渡された経験は、ほかにあるのだろうか? 菊地:なかなかないですね。ああいった体験は初めてです。アレハンドロ監督が音楽に詳しい方でしたし、日本にいらっしゃったときに「この曲が素敵で」などと話をしたので、渡してくださったんだと思います。(会場に実際、『美貌の青空(Bibo no Aozora)』が流れたのを聴いて)重厚感とアナログならでは音の響き方がとても素敵ですね。
坂本龍一の映画音楽は「原点」
2023年3月28日に、71歳でこの世を去った坂本龍一さん。YMOをはじめとしたポップミュージックでの活動に加え、数々の映画音楽を手掛けるなど、幅広い音楽性で、多くのファンを魅了した。菊地は、坂本さんの作り出す映画音楽が「自分としての原点」と語る。 菊地:「音楽って、こんな風に成り立っているんだ」と気づかせてくれたのが、映画音楽なんです。その中でも『戦場のメリークリスマス』は印象に残っています。ほかにも坂本さんが作られた曲の数々はグッとくるものばかりで、イヤホンで聴いているだけでも、ひとりの世界に没入できるような不思議な感覚に陥ります。坂本さんの映画音楽は自分としての原点ですね。 完成した映画を観て、音楽と映像の掛け合わせに驚いた経験はあるのだろうか? 菊地:このシーンにはこういう音楽が掛かるんだろうなと自分でなんとなく想像したりはするんですけど、全く違う曲が流れたりすることもあります。シーンの意味合いが違ったものになるというのも、音楽が持つ力だなと感じますね。 「ランタンエルメス」という名前にちなみ「灯り・光」を連想させる楽曲について菊地に聞いた。選んだのはペトロールズの『雨』だった。 菊地:『雨』という楽曲タイトルではあるんですけど、ワクワクするような曲調で、大好きな人に会いに行ったりとか、そういうときによく聴いていた曲です。長い道のりを走る電車の中で、これを聴いていると、胸がキュンとするというか、どこか甘い気持ちにさせてくれる曲です。 菊地は現在放送中のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』で茨田りつ子役を務めている。“ブルースの女王”を演じ、劇中で歌った『別れのブルース』も配信リリースされた。 菊地:演じるのが大変です(笑)。もともとモデルが淡谷のり子さんなので、歌唱力は到底足元に及ばないことは理解しているんですけど、少しでも淡谷さんに怒られないように(笑)、真摯に歌と向き合って、頑張りました。 歌うということは、演技をすることとまた違う世界なんですけど、改めて、歌は人の心をグッと動かすものだと感じました。耳から入ってきたものに、衝撃を受けて、その日、一日頑張れるようなこともありますし、役を演じていて、音楽の力はすごいと、改めて感じました。 J-WAVEが手がけるエルメスの番組『LA LANTERNE D'HERMÈS』は、毎週土曜と日曜の16:58、17:58にオンエア。また、「ランタンエルメス」特設サイト(←https://lanterne.hermes.com/)では、そのほかのコンテンツも展開中だ。3月は「JUMPING」をテーマにお届けしている。 (構成=中山洋平)