2場所連続新入幕Vへ欧勝馬がトップ並んだ! 高校2年で来日しレスリングでインハイ王者
◆大相撲 ▽夏場所12日目(23日、東京・両国国技館) 新入幕の前頭14枚目・欧勝馬が西同9枚目・正代をはたき込み、3敗を死守した。2敗で単独首位だった東同10枚目・湘南乃海が3敗に後退したため、先頭に並んだ。先場所は尊富士が110年ぶりの新入幕優勝を果たして話題をさらったが、今場所も快挙の予感が漂ってきた。トップは大関・琴桜、新小結・大の里を加えた4人で、12日目を終えて3敗が首位は2003年名古屋場所以来。1差に大関・豊昇龍、関脇・阿炎、平幕の大栄翔ら7人がひしめく大混戦となった。 普段と変わらぬ落ち着いた表情で懸賞を受け取った。欧勝馬は、初挑戦の元大関・正代にも「気にしない。『元』なんで」と気後れはせず。強烈な右のど輪で正代の出足を止めた。なおも前進しようとする元大関を巧みにいなして、はたき込み。しかし、マゲをつかんでいたのではないかという物言いがついた。協議の結果は軍配通り。「狙い通りです。マゲは触っていない感じでした」。3敗を死守し、1差で追っていた湘南乃海が敗れたため、トップタイに躍り出た。 世紀を超えた快挙が、2場所連続で達成される可能性が出てきた。春場所で110年ぶりに尊富士が新入幕優勝。「すごいなぁ。俺にもチャンスがあるんだなと思った」。日体大時代にしのぎを削った、日大の1学年下のライバルの快挙に奮い立った。優勝争い真っただ中でも「緊張して寝られない、食べられないということはなく、いい緊張感」と心身ともに充実している。 入幕までは順風満帆ではなかった。高校2年の4月に元横綱・朝青龍の紹介でモンゴルから来日。同じ飛行機に大関・豊昇龍も乗っていた。日体大柏ではレスリングで全国高校総体王者となり、日体大に進学を機に相撲に転向。学生横綱のタイトルを獲得し、21年九州場所に幕下15枚目格付け出しで鳴り物入りでデビュー。だが、初土俵後約2年半はけがも重なり、十両で足踏み。それでも、誰よりも早く稽古場に現れ、最後まで体を動かす努力を怠らなかった。「真面目なのがいい。諦めずにやり続けることでチャンスが回ってくる」と師匠の鳴戸親方(元大関・琴欧洲)は言う。 13日目の24日には来日後、初めて母と弟が来日予定だ。当初は「勝ち越しで迎えられるといいですね」と話していたが既に9勝を挙げて優勝争いの先頭を走る。それでも「意識せず一番一番」と欧勝馬。家族に初賜杯という最高のプレゼントを届ける。(大西 健太) ◆欧勝馬 出気(おうしょうま・でぎ)本名はプレブスレン・デルゲルバヤル。1997年4月9日、モンゴル・トブ県生まれ。27歳。16歳でレスリングを始め、高校2年で千葉・日体大柏へ編入。同3年で全国高校総体120キロ級V。日体大入学後、相撲に転向して学生横綱に。入門後は21年九州場所で幕下15枚目格付け出しデビュー。新十両は22年名古屋場所。得意は押しといなし。190センチ、158キロ。家族は母と兄と弟。 ◆過去の新入幕優勝 ▽1914年5月場所 東前頭14枚目・両国が、9勝1休(10日制)で優勝。当時は決定戦がなく、同じ成績の場合は番付上位の力士がVとなった。現在と違い不戦勝と不戦敗がなく、互いに休場扱い。また判定が紛糾した際は取り直しではなく「預かり」(引き分けの一種)とされた。 ▽2024年春場所 東前頭17枚目・尊富士が1場所15日制が定着した1949年5月場所以降では60年初場所の大鵬と並んで最長記録となる無傷11連勝を飾る。14日目には右足首を負傷も、けがを押して千秋楽の土俵に上がり勝利。13勝2敗で初Vを飾った。
報知新聞社