考察6話『錦糸町パラダイス』蒼(岡田将生)の狙いが見えてきた?
掃除業者「整理整頓」の3人が珍しく二手に分かれて活動する回だった。ドラマ24『錦糸町パラダイス~渋谷から一本』(テレ東金曜深夜24時12分~)6話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。
確かなもののない言葉にしづらい関係性
全体的にやや引き気味の画角。淡々と交わされる会話。そもそも『錦糸町パラダイス』は全編、たまたま金曜深夜に錦糸町の人びとを覗き見るような感覚のドラマだ。そんななかでも第6話はこの回で新たに登場した女性の決断を描く、ちょっと寄り道のような回だった。 この日、裕ちゃん(柄本時生)と一平(落合モトキ)が大助と別れて2人で掃除にやってきたのは綾(清水くるみ)の家。写真展で出会い、綾のカメラの先生となった男(秋元龍太朗)は綾を置いて海外へと行ってしまった。男への思いを断ち切るために掃除を依頼したらしい綾は思い出のカメラも「捨てちゃってください」と言う。 この二人は、抽象的な、あやふやな、言葉にしづらい概念や関係で語られる。「写真の匂い」もそうだし、綾にとっての男は「尊敬する人」であり、「よくわかんない人」と言う。男との関係も、「彼氏でもなかったし、そういう関係でもなかった」。 一平いわく「プラトニ(ック)すぎ。錦糸町っぽくない」二人。ふだんあまり相手に深入りしたり、必要以上に気にする素振りを見せない裕ちゃんは、珍しく綾に声をかける。 「一度未来を想像しません?」
会わない時間にこそ関係が変わっていく
ふとつけた地元FM「星降る錦糸町」の中で、綾の境遇に重なるメールが読まれる。パーソナリティのなみえ(濱田マリ)は「男性の身勝手な行動に振り回されているのはいつも女性」と語る。かといって女性ばかりが被害者というわけではなく、女性側も「従順なようでいて期待してる」と刺す。その言葉を聞いて、片付けを途中で止めようとする綾。 「最後まで片付けたほうがいいでしょ。このまんまここに居続けるにしろ、どっか他のところに行くにしろ、片付けなきゃ、何も始めらんないすよ」 裕ちゃんは帰りがけに綾に「未来を想像しません?」と言ったあと、「僕らも立ち止まってるんですよ」と続けた。大助(賀来賢人)、裕ちゃん、一平は、自分たちのことを片付ける代わりに、仕事として人の部屋を片付けて、そうやって立ち止まったままでいるのかもしれない。 ずっと抽象的な関係を結んでいた綾と男、二人の存在によって、このドラマには名付け得ぬ感情や関係が描かれているのだなと再認識させられた。そして、突然の登場に思えたこの二人が、裕ちゃんに自分と大助との関係性を見つめ直すきっかけを与えたようにも思える。 今回、二人と別行動をとっていた大助もまた、5話で恋人の心音(さとうほなみ)にかけられた言葉を反芻し、自分と裕ちゃんとの関係を改めて考えている。言ってしまった側の心音もまた、自分と大助との関係に思いを馳せている。それぞれが関わったり言葉を交わしたりしないときこそ、それぞれの関係が変化するときなのだと、この回は教えてくれた。