【鶴ケ城の環境保全】きれいな堀を後世に(9月6日)
会津若松市の国史跡・鶴ケ城(若松城)で、堀に堆積物がたまって陸地化したり、石垣の間から木々が伸びたりと環境悪化が深刻化していることが民間団体の調査で分かった。景観、水質ともに、きれいな堀を後世に残すため、計画的に改善を図ってほしい。 城の環境保全に取り組んでいる「鶴ケ城を守る会」が今年6月に実施した調査によると、城の北東に位置する「三岐壕[みつまたぼり]」と呼ばれる場所で、堀が堆積物で埋まり陸地化が進んでいた。廊下橋付近ではハスの大量繁殖が確認された。堀底に根を張るため、堆積物がたまりやすく、陸地化の要因となる。石垣の隙間から生え出る木々も至る所で確認され、放置すれば石垣の崩落につながりかねないという。 堀の陸地化を防ぐには、水底をさらって土砂などを取り除く「浚渫[しゅんせつ]」を行う必要がある。会津若松商工会議所は今年3月、「戊辰戦争から155年が経過する間、一度も浚渫されたことはなく、一部では陸地化が進み美観を損ねている」として市に環境整備を求める要望書を提出した。
堀の浚渫を巡っては、長野県松本市の国史跡・松本城の取り組みが参考になる。松本城でも江戸時代末期以降、本格的な浚渫を行ったことはなく、降水量や地下水の流入が少ない場合、水面上に堆積物が露出して悪臭が発生するなど課題が生じていた。浚渫に当たっては、堀底などの遺構を傷めないよう、2020(令和2)年度に実証実験を行い、城の堀に適した工法を選定した。2022年度に実施設計を行い、昨年度から7年計画で事業に着手した。会津若松市も早急な計画づくりが求められる。 実現には財源の確保も欠かせない。松本市は約14億円の事業費を見込んでおり、2分の1を国の補助、残りを自主財源で賄う方針だ。ふるさと納税のメニューに「松本城の整備」を設け、寄せられた寄付を財源に充てている。昨年度は約5300万円を充当した。会津若松市にも、ふるさと納税の使い道に「鶴ケ城整備」がある。個人や企業に広く協力を求めるべきだ。 鶴ケ城は600年以上の歴史を誇る名城で、市民の心のよりどころであり、本県を代表する観光資源でもある。堀の復元を含め、保全の機運を高めたい。(紺野正人)