虫食いナラ材活用しスツールに 熊本市「ファクトリエ」が販売 廃棄予定の素材に新たな価値を
ファッションブランド「ファクトリエ」を運営するライフスタイルアクセント(熊本市)は「虫食いナラ材」を独特の風合いに仕上げたスツール(丸椅子)の販売を始めた。廃棄予定だった素材に新たな価値を与えたのが特長だ。 在来種カシノナガキクイムシによる食害で、ナラやシイ、カシが大量枯死する被害は全国に拡大。細かい穴が無数に開くため、木材には適さなくなる。 ただ、カシノナガキクイムシは飛べる距離が短く、木々の間隔が十分に保つ間伐が施されていれば、被害は抑えられるという。 「虫食いナラ材は人の手が入らなくなった里山の深刻な状況を象徴している。有効活用し、社会問題として発信できないか考えた」と山田敏夫社長。捨てられるはずだった廃棄物や不用品に手を加え、付加価値の高い商品に生まれ変わらせる「アップサイクル」の発想を採用した。 ファクトリエは、顧客が着なくなったTシャツを綿に戻し、新しいTシャツにする「水平リサイクル」の実績もある。今回は「間伐できずに森が荒れるといった林業の課題に目を向けてほしい」との思いも込め、同社初となる家具販売に挑んだ。
虫食いナラ材の加工や組み立ては、木製家具メーカー・カリモク家具(愛知県東浦町)が協力した。虫に穴を開けられた際、自らを守ろうと、タンニンを作り出すナラの特性に着目。鉄分を多く含む古来の塗料を使い、タンニンとの反応で染色する「鉄媒染」という方法を用いた。自然に現れる染まり方の濃淡が、深みと独特な味わいを醸し出している。 座面には、デニム生地メーカー・篠原テキスタイル(広島県福山市)が手がけるデニムを採用。ファクトリエの水平リサイクルによるTシャツの発想に倣い、廃棄予定のものを使った。 スツールは1脚4万1100円(送料込み)。注文はファクトリエのオンラインサイトで11月末まで受け付ける。山田社長は「座り心地を楽しみ、商品開発の背景にあるストーリーも理解してもらいたい」と話している。ファクトリエ☎070(5462)3483。(小多崇)