宝塚歌劇団 「1日3時間程度の睡眠」「上級生からパワハラ」遺族側が主張…劇団員死亡
日テレNEWS NNN
今年9月、宝塚歌劇団「宙組」に所属する劇団員が死亡した問題で、遺族の代理人弁護士が「上級生からパワハラがあった」などと訴えました。遺族側は上級生から怒号を浴びせられたなどと主張しています。 ◇ ◇ ◇ 10日午後3時、遺族の弁護士が訴えたのは宝塚歌劇団で起きたパワハラなどの実態でした。 遺族代理人・川人博弁護士 「約1か月半、わずか1日3時間程度の睡眠しか取れない状況が続き、加えて上級生からのパワハラもあり、健康を損なって亡くなった」 亡くなったのは宝塚歌劇団に入って7年目の25歳の女性でした。会見では、遺族の悲痛な胸の内も明かされました。 遺族の訴え(書面で) 「娘の笑顔が大好きでした。その笑顔に私たちは癒され、励まされ、幸せをもらってきました。けれど、その笑顔は日に日に無くなっていき、あの日、変わり果てた姿となり二度と見ることが出来なくなってしまいました」 「くりくり動く大きな瞳も、柔らかい頬も、いとおしい声も、何もかも私たちから奪われてしまいました」 ◇ ◇ ◇ 「清く 正しく 美しく」―――。来年で110周年と長い歴史を紡いできた宝塚歌劇団。女性は「宙組」に所属し、舞台に上がっていましたが、今年9月、兵庫県宝塚市にあるマンション敷地内で遺体で発見されました。現場の状況から自殺の可能性が高いとみられています。 この日の会見でまず訴えたのは、過重労働の実態です。 遺族代理人・川人弁護士 「8月16日から稽古が始まるんですけど、彼女の場合は当然自分が俳優として出ますが、あわせて下級生のまとめ役。責任者として」 自身が演じる役の稽古に加えて、下級生約45人のまとめ役も任されていたという女性。女性が亡くなる直前、1か月の労働時間をまとめた表によると、午前8時に自宅を出て、日付が変わってから自宅に帰るという、わずか3時間睡眠の生活が続いていたといいます。 この期間、劇団によって「休日」とされていた日は6日。しかし、その休日も…。 遺族代理人・井上耕史弁護士 「その日も終日業務を行わざるを得ない状況でした。休日には公演で使用する化粧品や衣装などの買い物、新人公演のための書き物や、演出家との連絡も普段同様に行っていたと」 弁護士によると、「休日」とは名ばかりで、通常業務をせざるを得なかったといいます。遺族側の主張によると、劇団側はこうした事態を把握していたにもかかわらず、適切な対応を行わなかったというのです。 さらに、上級生からはパワハラを受けていたというのです。 川人弁護士 「本来は上級生がサポートをするところを、パワハラと言うべき様々な暴言発言を繰り返していたと」 稽古中、頻繁に上級生に呼び出され怒号を浴びせられたという女性。さらに、亡くなった9月下旬には、「下級生の失敗はすべてあんたのせいや」「マインドが足りない。マインドがないのか!」というような“暴言”もうけたということです。 劇団の生徒手帳のあるページには「上級生、下級生とは縦の絆」との言葉があります。 川人弁護士 「背景のひとつには、劇団における縦の関係の過剰なまでの重視という問題も、弁護士としては指摘せざるを得ない」 女性を巡っては一部週刊誌で上級生とのトラブルも報じられていました。 川人弁護士 「上級生から、前髪巻いてあげるということで、ヘアアイロンを額に当てられてやけどをおった」 「(女性は)聞き取りに対して事実を述べたけれど、その後、上級生から詰問され、劇団はHPで『この事件の報道は事実無根である』との理事長の声明を発表した。こういう劇団側の対応で精神的な負荷をうけたと」 このトラブルについて、劇団側は女性が亡くなった1週間後となる、10月7日の会見で、トラブルなどはなかったと否定していました。 宝塚歌劇団・渡辺裕企画室長 「生徒間で何らかのトラブルがあったのではないかというような…弊団としては否定している事実」 「加害者も被害者もおりません」 「ヒアリングの結果、本人たちもそういうことはなかったと」 ◇ ◇ ◇ 遺族は、劇団と、劇団を運営する阪急電鉄に、事実を正しく把握した上で、謝罪と適切な補償を求めています。 遺族の訴え(書面で) 「心身共に疲れ果てた様子の娘に何度も『そんな所へ行かなくていい、もう辞めたらいい』と止めましたが、娘は『そんなことをしたら上級生に何を言われるか、何をされるかわからない、そんなことをしたらもう怖くて劇団には一生行けない』と涙を流しながら必死に訴えてきました」 「見て見ぬふりをしてきた劇団が、その責任を認め謝罪すること、そして指導などという言葉では言い逃れ出来ないパワハラを行った上級生が、その責任を認め、謝罪することを求めます」 ◇ ◇ ◇ 10日午後、都内で行われた公演を見た宝塚ファンは、どう感じたのか。 ファン歴約10年 「何が事実か私たちにはわからないけれど、率直に悲しいというか残念というか…。真実がわかってほしい」 この日、宝塚歌劇団は「事実は重く受けとめています。ご遺族に対して誠実な対応をしてまいりたい。外部の弁護士による調査結果を踏まえ真摯に対応してまいります」とし、阪急電鉄も「阪急電鉄としても大変重く受け止めております」とコメントしています。