500本以上の作品を手がけた「B級映画の帝王」ロジャー・コーマンさん 「映画に一番大切なのは“脚本”」という信念
ありきりたりの題材もより面白く
ありきたりの題材に変化をつけるのもうまい。人をひき殺すとポイントが加算されるカーレースなど不謹慎でも笑わせる。「ジョーズ」の人気に便乗した「ピラニア」はプールや川が舞台で設定は安っぽいが、観客の予想通りに人々が襲われて大いに沸かせた。 映画配給も行い、黒澤明監督によるソ連映画「デルス・ウザーラ」をアメリカに紹介、同作はアカデミー賞外国語映画賞を受賞した。 「配給にも目が利いていた。自身が作る映画のタイプとは異なる配給作品が多かった」(垣井さん)
日本にも熱狂的ファンが
映画評論家の北川れい子さんは思い返す。 「日本にも熱狂的ファンがいます。80年代半ばから90年代にかけてが人気絶頂期でしょうか。東京国際ファンタスティック映画祭で上映された時、彼の名前が出ただけで会場は拍手喝采、どよめいた」 86年の同映画祭に合わせて来日、その後も東京国際映画祭の審査委員長などを担う。作家の村上龍さんが監督を務めた「KYOKO」のプロデュースもしている。 「ゴッドファーザー」の2作目で上院議員、「羊たちの沈黙」ではFBI長官役で出演。両作の監督が、世に出るきっかけを与えてくれた感謝の念から請うたのだ。 2009年にアカデミー名誉賞を受賞。伝記的ドキュメンタリー映画「コーマン帝国」(11年)も話題に。 5月9日、98歳で逝去。 良いと思う映画を問われて、「戦艦ポチョムキン」「市民ケーン」「アラビアのロレンス」を挙げていた。 「週刊新潮」2024年6月6日号 掲載
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