かつての絶対王者が2連勝、川崎・鬼木達監督が光州戦で行った「メンバー変更」と間違えた「入り方」【Jリーグ、ACL、W杯予選「サッカー秋の陣」最大の敵】(3)
スポーツ競技で勝つためには、心身の充実が必要だ。フィジカル、メンタルともに相手を上回ってこそ、勝利を手にできる。もしも、どちらかが欠けていたなら、諸刃の剣となって自分に襲いかかってくることもある。そうした厳しい現実を突きつけられた「サッカー秋の陣」について、サッカージャーナリスト後藤健生が考察する。 ■【映像】ベテラン小林悠がトップ起用「入り方を間違えた」川崎vs光州の死闘
■負けなしが続いたことで生まれた「過信」
最近のFC町田ゼルビアが、なぜチーム・コンセプトを徹底できないのか? その原因は多岐にわたるので、一概に決めつけるわけにはいかないが、彼らの戦力強化や首位に立ち続けたことによる選手たちの心理面の変化というのが原因の一つであるような気がするのである。 東京ヴェルディの選手たちが、城福浩監督が嘆いたように戦う姿勢を失ってしまったのも、同じようなメカニズムが働いたのかもしれない。 シーズン開幕の頃には、東京Vの選手たちは死に物狂いだったはずだ。戦力的に苦しいことは、自分たちでも感じていたことだろう。だから、彼らは全力を尽くして真っ向勝負に挑んだ。そして、次第に選手個々の能力、チームの戦力、そして順位が上がってきた。 最近はJ1リーグの上位につけ、負けなしも続いていた。 もちろん、好成績が続いたことで自信を持ってプレーすることができるようになったことは、大きなプラス材料だ。リードしながら試合の終盤を迎えると、「いつ、同点にされるか」とオドオドしながらプレーしていたのは過去の姿。しっかりとゲームを締めることも彼らは覚えていた。 だが、そこには同時に自分たちの力についての過信が生まれる危険も潜んでいた。
■2連勝で「光明が見えてきた」川崎だったが…
残留争いをしている湘南相手の試合で、そうした慢心がほんの少しではあるが、顔を出したのかもしれない。それが、試合の入りで出てしまった。それが、第33節の湘南戦だったのではないだろうか? もちろん、選手たちはすぐに「これではいけない」と気づいたはずだが、入り方を間違えてしまうと、強豪チームでも試合中に立て直すのは難しいことなのだ。 同じようなことは、どこのチームにも起こりうる。 第32節の新潟戦では5対1で勝利し、続く町田戦も4対1。川崎には、光明が見えてきたのかもしれない。 だが、その日程の谷間に行われたACLの光州FC戦では、最悪の試合をしてしまった。 Jリーグの日程を優先して、光州戦ではメンバーが変更された。 最近はアンカーとして中盤でにらみを利かせている河原創や、進境著しいストライカーの山田新、スピードスターのマルシーニョなどはすべてベンチスタート。このところ、急激に守備の安定感を増してきた若手DFの佐々木旭もベンチだった。 そして、今シーズンはほとんど交代出場だったベテランの小林悠がトップで先発した。 リーグ戦のことを考えれば、このメンバーで戦うしかない。同時に、光州の戦力を考えれば、このメンバーでも戦える。鬼木達監督には、そんな思惑があったのかもしれない。 だが、選手たちも、力をセーブしようという気持ちがあったのだろうか? ゆるい入り方をしてしまったのだった。
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