最新作『ストレイチルドレン』に、伝説的な“戦わないRPG”『moon』も! 個性濃すぎる「オニオンゲームス」の忘れがたい足跡
かつて「スクウェア」や「ラブデリック」などに身を置き、様々な実績を積み上げた木村祥朗氏が設立した「オニオンゲームス」は、個性に溢れた意欲的なゲーム作品をいくつも作り上げてきました。 【画像】伝説のRPG『moon』とはなんだったのか。最新作までの軌跡を振り返る 最新作『ストレイチルドレン』のリリースを記念し、ニンテンドースイッチなどで遊べる「オニオンゲームス」各作品と魅力の一端を紹介します。これまで同社がどのような作品を手がけてきたのか、その足跡にご注目ください。 ■スイッチ/PS4/Steam『BLACK BIRD』 『ストレイチルドレン』や木村氏が以前手がけてきたゲームの印象が強い人は、STGである『BLACK BIRD』が意外な作品に見えるかもしれません。しかし、可愛らしさもあるデザインながらほの暗い影を感じさせる世界観は、「ラブデリック」作品を彷彿とさせます。 ゲームの目的も「世界を救う側」ではなく、「呪われた黒い鳥となり、王国を滅ぼす」という、一般的な作品とは真逆の位置にプレイヤーが置かれている点も興味深いところです。 軸となるSTG部分もしっかり作り込まれており、「コンボやボムを活用して、どうやってスコアを稼ぐか」というSTGの基本が練り込まれたシステムで、プレイヤーを楽しませてくれます。 ゲーム性にせよ独特な世界観にせよ人を選ぶタイプなのは確かですが、代替のない魅力を持ち合わせているのも事実。STG好きなら、プレイを検討する価値のある作品です。 ■スイッチ/Steam『勇者ヤマダくん』 愛らしいドットテイストと作品の世界がマッチした『勇者ヤマダくん』は、2019年6月27日に配信されました。ただし、作品としての『勇者ヤマダくん』は、先に基本プレイ無料型のiOS/Android版があり、その運営終了とオフライン版の配信を経たのち、買い切り型のスイッチ版がリリースされたのです。 複雑な経緯を辿った『勇者ヤマダくん』ですが、サービス終了で終わらせるには惜しい作品だった証とも言えるでしょう。そのゲームシステムは直感的に分かりやすく、一筆書きでダンジョンを踏破していくパズル系RPGです。 ダンジョンの各フロアは、全てのマスを通らずともクリアは可能。しかし、全踏破でボーナスが得られるため、「いかに得するため、適した一筆書きを描くか」についつい熱中してしまいます。 一般的なRPGでも、「ダンジョンは一通り回って、宝箱を回収してからボスに向かいたい」という人が多いことでしょう。そうしたRPGの“あるある”を、パズルに上手く落とし込んだ手腕に感心しきりです。 ちなみに本作のダンジョン攻略&育成パートは、36才の「ヤマダくん」が自作しているゲームという設定。しかも、近所の女の子「マリアちゃん」に一目惚れしたヤマダくんは、彼女を自作ゲームのヒロイン役に抜擢するという、ちょっとヤンチャな面も覗かせます。 ヤマダくんの恋の行方とゲーム開発が、どんな結末を迎えるのか。奇妙で愛らしいこの世界は、不思議とクセになる味わいです。 ■スイッチ/PS4/Steam『moon』 木村氏が以前籍を置いていた「ラブデリック」のデビュー作であり、のちのゲーム業界にも影響を及ぼしたのが、1997年10月16日に発売されたPS向けRPG『moon』です。 RPGは、ファミコン・スーパーファミコン時代に一躍人気ジャンルとなり、「RPG黄金期」と呼ばれるほどの盛り上がりも見せました。その勢いは初代PSにもおよんでおり、「勇者が魔物と戦い、世界を救う」という王道的な展開も受け継がれていきます。 そこに一石を投じたのが、この『moon』でした。本作の世界でも勇者が登場し、アニマルを倒して経験値を稼ぎます……が、本作の主人公はこの勇者ではありません。ゲームの世界に入り込んでしまった少年が主人公を務め、殺されたアニマルの魂から「ラブ」をゲットし、戦いではなく心を通じ合わせることでレベルアップしていくのです。 RPGなのに敵と戦わず、「もう、勇者しない」というキャッチコピーも話題となった『moon』は、これまでのRPGの概念を覆した作品として注目を集め、プレイヤーたちに斬新なゲーム体験を提供しました。 ここ10年ほどでは、倒さないことがひとつのカギになるRPG『UNDERTALE』が「戦わないRPG」として知られ、大ヒット作となりました。そんな『UNDERTALE』より20年も前に、「戦わないRPG」の道を切り開いた『moon』は、新たな可能性を提示した先駆者と言えるでしょう。 なお、オリジナル版の『moon』は「ラブデリック」が開発しましたが、2019年10月10日に「オニオンゲームス」が完全移植版をスイッチ向けにリリース。その後、PS5/4版やSteam版も登場し、誰でもアクセスしやすい環境になっています。 ■スイッチ/Steam『Mon Amour ~モナムール~』 語られぬ物語に奥深さが潜むSTG『BLACK BIRD』、RPGを一筆書きに落とし込むゲーム性とちょっとおかしな世界観がクセになる『勇者ヤマダくん』、戦わないRPGの原点『moon』と、魅力の方向性がいずれも異なる個性的な作品ばかりですが、個性という点では『Mon Amour ~モナムール~』も非常に色濃い1作です。 「愛の形がちょこっと違う不思議の国」を舞台とする本作は、主人公の「髭男爵」がお姫様と64人の国民に“チューをする”ゲームです。この切り口だけでもかなり衝撃的ですが、その印象を損なうことなく、世界観からゲーム性まで統一された仕上がりにも脱帽させられます。 ゲーム画面は横スクロールSTGのように見えますがショットやボムはなく、自機である髭男爵の移動も十字ボタンやスティックは使いません。ボタンを押すと髭男爵は上昇し、離すと下降する。ボタンの押し離しのみで操作し、障害物を避けていきます。 避けたその先に待っているのは、連れ去られてしまった64人の国民たち。国民に触れる=チューすると、無事救出成功となります。国民の中には可愛い女性だけなく当然男性もいますし、獣人やミノタウロスだっていますが、髭男爵は分け隔てなく“チュー”します。 ボタンひとつだけで操作し、障害物を潜り抜け、モナガールである国民たちと“チュー”をする『Mon Amour ~モナムール~』。ノリと勢いを感じるバカゲー要素と、1ボタンの調整に緊張感のあるゲーム性を合わせた、個性豊かな作品です。 ■スイッチ『ストレイチルドレン』 ここまで紹介した個性的な作品を積み上げてきた「オニオンゲームス」の最新作が、本日12月26日にリリースした『ストレイチルドレン』です。本作は、もちろんデザインそのものは異なりますが、グラフィックのテイストや味わいが『moon』にも近く、「ゲームの世界に吸い込まれて始まる物語」という共通点もあります。 「オニオンゲームス」は、木村氏をはじめ『moon』に関わったスタッフも多く在籍しており、『moon』の精神的続編という一面も持ち合わせています。『moon』ファンから関心と期待が集まっているのも、至極当然の話でしょう。 もちろん、『ストレイチルドレン』と『moon』は全く別の作品です。『ストレイチルドレン』で主人公が辿り着くのは、「コドモの国」。そしてこの世界の「オトナ」は、“コドモを食べにくる”存在として描かれます。 『moon』と違って本作は、「オトナ」と遭遇するとバトルになり、相手は欲求不満を具現化した攻撃を放ちます。主人公の少年は「くるくるルーレット」を通して戦いますが、攻撃だけでなく「ことば」を使うという選択肢も。 選んだ「ことば」によって、相手が起こることもあれば、笑ったり拗ねたりと、様々な反応を示します。攻撃して倒すのか、「ことば」でオトナの心に触れるのか。その選択を判断するのは、ほかならぬプレイヤー自身です。 リリースされたばかりなので、『ストレイチルドレン』について詳しく語れるプレイヤーはまだいません。だからこそ、誰かに語られるよりも前に『ストレイチルドレン』の本質に触れるタイミングとも言えるでしょう。 「戦わないRPG」として話題となった『moon』の開発スタッフが、今どんな作品を生み出したのか。ちょっとビターな童話風RPG『ストレイチルドレン』の本質を、その目で直接お確かめください。 今回はスイッチで遊べる「オニオンゲームス」作品を紹介しましたが、このほかにも『MILLION ONION HOTEL』や『Romeo & Juliet』といったゲームも手がけています。ぜひ「オニオンゲームス」の公式サイトもチェックし、個性派な作品たちの一端を覗いてみてください。
インサイド 臥待 弦
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