新型ミニ カントリーマンは“クロスオーバー”から名前も中身も激変!!! 新デザイン&サイズ拡大は受け入れられるの?
フルモデルチェンジし、かつ名称も変更された新型「ミニ カントリーマン」の魅力とは? ハイパフォーマンスなジョンクーパーワークス(JCW)モデルに試乗した小川フミオがリポートする! 【写真を見る】新型ミニ カントリーマンJCWの細部を徹底チェック!!!(51枚) 斬新なインテリアにも注目!!!
立派な見た目
ミニでもっとも実用性が高いカントリーマンがフルモデルチェンジした。荷室が大きくなったり、デジタルの機能が豊富になったりと、デザインのほかにも注目点が多い。ミニファンでなくても注目に値するモデルだと思う。 これまで日本では「ミニ クロスオーバー」の名称で販売されてきたモデルで、名称をグローバルなものと統一した新型は、2023年11月に予約開始されている。実車に乗れたのは、2024年2月のポルトガル。ひとことで感想を述べると、楽しいクルマだ。 カスカイスというポルトガル・リスボン近くのリゾート地で乗ったのは、ミニ ジョンクーパーワークス(JCW)カントリーマン。ガソリン、ディーゼル、ピュアEVなどラインナップが豊富な新カントリーマンのなかで、もっとも高性能を誇るモデルだ。 用意されたのは、ブラック系のボディに、各所にビビッドな赤色でアクセントをつけているモデル。最高出力233kW、最大トルク400Nmとパワフルな2.0リッターエンジンに、全輪駆動システムを組み合わせたJCWのイメージにぴったりの仕様だ。 実際のボディは先代(クロスオーバー)よりやや大ぶりになっている。先代は、全長4315mm、全幅1820mm、全高1595mmで、ホイールベースは2670mm。新型は、全長×全幅×全高が4445mm×1845mm×1660mm。ホイールベースも2690mmに延長されている。 たしかに見た目は立派。ミニなんだからできるだけコンパクトなのが望ましいなんていう守旧派(?)にとってはやや残念かもしれないが、衝突安全における最新のレギュレーションをクリアしつつ、室内空間を拡大して乗員の快適性を高めた今回の方向性は、体験してみれば、たしかに利便性が上がったとも思える。 ガソリンモデルのJCWではリヤシートが前後にスライドするし、足元のフロアは深く、フットスペースもレッグスペースも、前後席あわせて175cmの人間が4人乗っても余裕。荷室も広くて深い。この点はステーションワゴンの利便性を重視するひと向けのカントリーマンの面目躍如たるものを感じさせる。 ドライブモードは豊富で、走りに直接関係するのは、エコモードに相当する「グリーン」、ノーマルの「コア」、スポーツの「ゴーカート」、それに個人の設定ができる「パーソナル」だ。基本的に速い。とりわけゴーカートは、スロットルレスポンスが鋭くなり、硬めの足まわりとの相性もよく、カーブが連続する道ではとくに楽しめる。 アクセルペダルの踏み込みはごく少なく、ステアリングホイールも反応が速くクイックなのですっと動かす。そんなふうに、自分の身体感覚にダイレクトに反応してくれるのが、スポーティな足まわりと力のあるドライブトレイン搭載のJCWの魅力だ。 もっとも、個人的には、太いトルクによる余裕ある加速感を味わいつつ、ちょっとゆったりした気分で走れるグリーンモードも好ましかった。大人っぽいというと語弊があるかもしれないけれど、常にカリカリのドライブをする必要のないひとも、安心して乗れる。 新型ミニのもうひとつの特徴は、デジタライゼーション技術の進化。インフォテインメントシステムを、初めてアンドロイドOSを使った「ミニOS9」で動かすことになった。 ユニークなのは、音楽や音がドライブモードと連動している点。なかでも私がおもしろかったのは、ストリーミング中に操作すると、丸いモニター画面がそのままビニール盤(レコード)に変わり、指でこするとDJのようなスクラッチ音がするという遊び。 従来のOS8.5まではリナックスベースだったものを、今回アンドロイドOSに変えた理由として「開発のしやすさ」と、担当者は教えてくれた。 「ゲームなどがダウンロードできるので、サードパーティも参加しやすくするためには、アンドロイドOSなんです」と、続けて話す。 かつてミニが、2021年に「ビジョン アーバノート(Urbanaut)」なるコンセプトモデルを発表したとき、たんに室内にいるだけで楽しいというコンセプトが謳われた。新しいカントリーマンで、さまざまなデジタル技術を体験してみると、なるほどこれか! と、得心がいった。 カスカイスの会場には、1959年に発表されたオリジナルミニの1台がちょこんと展示されていた。ルーフキャリアをつけて、上にはカスカイスというビッグウェイブが名物の土地にちなんでサーフボードを載せていた。ライフスタイルをゆたかにするという目的において、ミニは新旧もおなじ。ただ時代に先んじた技術によって、歴代ミニには独自の魅力を身につけてきた。新しいカントリーマンではさらに先へと進んだ。そう、確信させてくれた。
文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ)