愛媛今昔の「ドライブイン」特集 老舗から新店まで
ゴールデンウイークまっただ中。車での遠出に絶好の季節です。昔は幹線道路を走るとドライブインがいくつもあったものです。食事や休憩に家族で楽しめる元祖・立ち寄りスポットは、時代の流れとともに激減し、今や希少な存在です。そこで、昭和の風景そのままのノスタルジックな空間からアメリカンスタイルの新店まで、県内のドライブインを探してみました。こだわりや人情がいっぱいのお店に、足を運んでみませんか。 ■半世紀愛されメニューは80種以上 「ドライブインふじ」(西条市) 石鎚神社や湯之谷温泉にほど近い国道11号沿い。「和風お食事処ふじ」の大きな看板が出迎えてくれます。以前は「ドライブイン」の表示がありましたが古くなって外したとか。正式な店名は「ドライブインふじ」。駐車場はゆったり25台収容できます。 創業は1973年。半世紀超の歴史を刻んだ店は当時のまま。懐かしくも安心感のある雰囲気が支持され、地元客や長距離運転手などが次々に訪れます。「人気の秘密は従業員のチームワークです」と社長の藤田幸雄さん(74)。妻美恵子さん(73)と長男友和さん、スタッフ5人が厨房と店内でテキパキ動きます。 400円~900円に抑えた価格、量やメニューの多さも見逃せません。めん類、丼、カレー、オムライスに加え、焼肉、とんかつ、えびフライなど数々の定食を含め80種類以上。なかでもこだわりは鉄板で提供するやきそばです。具材や味もイカ、キムチ、みそ、カレーなど「お客さんのリクエストでどんどん増えていきました」と照れ笑い。 ■アメリカンな雰囲気で味わうホットドッグ 「ドライブイン OUT THERE―アウトゼア―」(松山市) 青い空と海がまぶしい松山市浅海原の国道196号沿い。今治方面に向かっていると、道路左側のアメリカンな雰囲気の建物が目に入ります。「ROUTE196」のエンブレムにオートバイのマーク。なんだかロードムービーに出てきそうですね。 オーナーの山田英司さん(58)によると、2015年8月19日の「バイクの日」にオープンしたこだわりの店。10代の頃からオートバイや車が好きで、いつか景色のいい場所にツーリング客やドライバーが集う店を開きたいと夢見て、ファストフード会社勤務を経て念願をかなえました。子どもの時、父とドライブインに行った思い出も相まって、店名にドライブインを冠しました。「私がドライブインを作ると、こんな感じです」 店にはテラスがあり、汗をかいたサイクリング客に人気だそうです。洋楽のオールディーズが流れる店内は落ち着いた雰囲気で、最近は外国人客やお遍路さんも増えているといいます。 お店の中心メニューはホットドッグ。早速、一番人気のスパチリドッグセットを注文しました。ホットドッグにポテト、サラダ、ドリンクが付いて1150円。スパチリドッグは自家製のチリソースが口の中に広がって口溶けの良い柔らかなパンと絡み合います。ソースはパンチがありながら甘みもある上品な辛さで、日本人好みの味です。 ■「タイづくし」の豪華日替わり定食 「西ドライブイン」(宇和島市) 宇和島市津島町の国道56号の海岸線沿いにある「西ドライブイン」も1973年創業。半世紀以上にわたり、往来のドライバーに新鮮な魚料理を提供してきました。近隣のドライブインは姿を消しつつありますが、店主の西勉生さん(70)と妻の早苗さん(72)は「死ぬるまで続けます」と力を込めます。 4月下旬、平日の昼時に訪ねると多くの客でにぎわっていました。常連客がそろって頼んでいたのは「日替わり定食(950円)」。客の8割が注文する人気メニューです。 定食はタイのフライ、タイとアジの刺し身、タイの南蛮漬け、小鉢、みそ汁、ご飯とボリューム満点。豪華な「タイづくし」に驚いていると、早苗さんは「(利益を)計算しよったらできん」とにっこり。勉生さんが市場や養殖業者から魚を仕入れ、手頃な価格を維持しているそうです。 さらにびっくりしたのは、店裏のいけす。常に新鮮な魚を提供できるようにしています。勉生さんは「魚は鮮度。お客さんからは『身がコリコリしとる』と喜んでもらってる」と手間を惜しみません。
愛媛新聞社