日本版ライドシェア始まった福岡交通圏…「物価高、生活費の足しに」「隙間時間生かし」
個人が自家用車を使って有償で客を送迎する「日本版ライドシェア」が12日、福岡市と周辺の自治体で構成する「福岡交通圏」でも始まった。九州での運行開始は初めて。福岡交通圏では最大520台のタクシーが足りないとされており、タクシー不足の解消につながるか注目されている。(中尾健、橋本龍二) 【図】福岡交通圏の区域
「事故ないよう」
12日午後4時頃、福岡市南区の「五十川タクシー」には、タクシーを示す屋根の上のあんどんが付いていない3台の車が並んでいた。3人のドライバーは、アルコールチェックを受けたり、助手席のフロントガラスの上部に「ライドシェア」の表示を設置したりして出発した。
同社は30~50歳代の男女10人をパートタイムで雇用。実際に公道を走行するなどの研修を行った。
普段はガソリンスタンドで働いている南区の男性(63)は、20歳代の頃からトラックなどの運転手を経験。物価高の中、生活費の足しになればとライドシェアのドライバーを始めることにした。男性は「緊張しているが、事故だけはないように運転したい」と気を引き締めていた。
隙間時間生かし
ネパール出身で日本に帰化した南区の男性(43)は、通訳などの仕事をしているが、車の運転が好きで、隙間時間を生かしてライドシェアドライバーに挑戦した。12日は約6時間で観光客など10組を乗せたといい、男性は「多くのお客さんから『乗り心地が良い』と言われてうれしかった。これからも丁寧な運転を心がけたい」と話していた。
まず5事業者
日本版ライドシェアは4月以降、京都などで始まった。福岡交通圏では、不足台数の半分にあたる260台を上限に、夕方から夜間を中心に毎日の運行が認められた。国土交通省によると、12日までに31事業者が、運行に必要な国交省の許可を受けているという。
配車アプリ「GO(ゴー)」を運営する会社によると、同日は車両の点検などの準備が整った5事業者が運行をスタートした。
他の事業者も今後、順次開始する見通しだ。福岡ラッキータクシーグループ(福岡市)は、採用したドライバーがタクシーの運転に必要な「2種免許」を取得するまでの間、ライドシェアの運転手として働いてもらう。1日最大14台の運行許可を受けており、まず30人程度を充てる考えだ。