昭和のダメオヤジ・阿部サダヲ“市郎”が令和の常識に一石を投じる<不適切にもほどがある!>
阿部サダヲ主演の金曜ドラマ「不適切にもほどがある!」(毎週金曜夜10:00-10:54、TBS系※初回は夜10:00-11:09)の第1話が1月26日に放送された。同作は、昭和のおじさんがコンプラで縛られた令和の人々に考えるきっかけを与えていく、完全オリジナルの意識低い系タイムスリップコメディー。“愛のムチ”と称した厳しい指導が当たり前な昭和の体育教師・小川市郎(阿部)が、バスで帰宅中、ウトウトしている間に1986年(昭和)から2024年(令和)にタイムスリップしてしまう。(以下、ネタバレを含みます) 【写真】“あのアイドル”そっくり?磯村勇斗演じるムッチ先輩こと秋津睦実 ■宮藤官九郎の脚本によるオリジナル・コメディー作品 脚本は宮藤官九郎が務め、プロデューサーは磯山晶が担当。阿部とは、「池袋ウエストゲートパーク」(2000年)、「木更津キャッツアイ」(2002年)、「タイガー&ドラゴン」(2005年、全てTBS系)でタッグを組んできた2人が、令和で新たな作品を生み出す。 同ドラマには、突如1986年から2024年へタイムスリップし、令和では考えられない“不適切”な言動を繰り返す小川市郎役で阿部、バラエティー番組のアシスタントプロデューサーとして働くシングルマザー・犬島渚役で仲里依紗が出演。 また、とあるアイドルに心酔するあまり、その身なり言動すべてを完コピする男“ムッチ先輩”こと秋津睦実を磯村勇斗、市郎と逆で、2024年から1986年に息子と共にタイムスリップする社会学者の向坂サカエを吉田羊、そして、市郎の一人娘・小川純子を河合優実、サカエの息子・向坂キヨシを坂元愛登が演じる他、袴田吉彦、山本耕史、古田新太ら個性豊かな面々がストーリーを盛り上げる。 ■厳しい指導で「地獄のオガワ」と呼ばれている男が令和にタイムスリップ 1986年、小川市郎は中学の体育教師で、野球部の顧問も担当している。“愛のムチ”と称した厳しい指導で、生徒たちからは「地獄のオガワ」と呼ばれ恐れられている。その一方で、家では男手一つで17歳の一人娘・純子を育て、娘の非行に手を焼く普通の父親でもある。毎朝、純子が市郎に聞くのが「今日は何時に帰ってくる?」だが、髪形のセットを念入りにしている娘の様子から、男を家に連れ込み“ニャンニャン”するのではないかと心配していて、帰宅時間をはっきりと伝えることをしていない。 ある日、いつも通りに学校でタバコを吸い、同僚の女性教師にセクハラ発言をして、部活ではウサギ跳びやケツバットなどで連帯責任を取らせたりしていたが、バスで帰宅中、ウトウトしてしまい、目を覚ました市郎の目に飛び込んできたのは、パンツが見えそうなスカートをはき、耳からうどんを垂らした女子高校生がバスに乗り込んでくる姿だった。 ■喫茶店に置いてある「週刊少年ジャンプ」で2024年だと知る バスの後部座席でタバコを吸いながら、ワイヤレスイヤホンをしている女性に「耳からうどん垂れてますよ」と指摘したりするが、次のバス停で乗車してきた乗客たちもタバコを吸う市郎に嫌悪の視線を向けてきた。その女性に対して、セクハラにあたる不適切な発言をしてしまい、市郎は完全に危険人物扱いに。 関わりたくないと思った乗客たちは次のバス停で一斉に下車。市郎もワケが分からず、逃げるようにしてバスを降りると、そこにはこれまでに市郎が目にしたことのない異様な格好や行動をする人たちがいる景色が広がっていた。 なんとか見つけたなじみの喫茶店に飛び込み、事態が飲み込めないまま市郎は動揺してカウンターにいた犬島渚(仲里依紗)のビールを勝手に飲み干し、口論になってしまう。 その喫茶店に置いてある「週刊少年ジャンプ」を見ると「2024年」という年号が書かれていて、トイレに入ると小泉今日子の40周年のポスターが貼られていた。そのポスターをはがすと壁に穴が空いていて、そこをくぐると同じ喫茶店のトイレだったが、こちらには小泉今日子の「渚のはいから人魚」のポスターが貼ってあった。 カウンターの新聞紙の日付を見ると「1986年1月18日」。市郎が元々いた時代だった。 ■喫茶店のトイレが令和と平成をつなぐ出入口に つまり、市郎は自分の意思とは関係なく“タイムスリップ”してしまっていた。バスに乗って、ウトウトしてる間に時空が歪んだのか、目覚めると令和の時代に。そして、喫茶店のトイレが令和と昭和を結ぶ出入り口になっていて、結果的になんとか昭和に戻ってくることができた。 夢だったのではないかと思うが、夢とは思えず、自分は本当に未来に行ったのではないかと考え始めた。そんな時、市郎の中学に転校生がやってきた。その転校生・向坂キヨシは前日、娘の純子が部屋に連れ込んでいた男だった。 “かわいがって”やろうと思った市郎は、キヨシを野球部に入部させて1000本ノックでしごき、「明日までに坊主にしてこい」と命令。その命令を忠実に行おうとしたキヨシだったが、社会学者である母親・サカエが学校に乗り込んできた。サカエにも不適切な言葉を浴びせると、「面白くなってきたので録音させていただきますね」と言ってバッグから取り出したのが“スマホ”だった。 市郎が未来に行った時に一番気になったのがこれ。あの“薄くてツルッとしたもの”の正体が知りたい市郎はサカエのクレームも上の空で何も耳に入ってこない。 ■「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の話題であのバスがタイムマシンだと確信 生徒の「将来の夢」という作文発表の中で、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の話が出てきて“タイムマシン”が理論的に可能だと教えられると、あのバスがタイムマシンだったと確信。 市郎の考えた通り、そのバスに再び乗ったことで未来に行くことに成功。居酒屋で機械での注文の仕方がよく分かってない市郎は“炙りしめ鯖”を150個も注文してしまった。 隣のテーブルで会社員が無意識のうちに部下の女性を傷つけたと、ハラスメントに関する追求を受けているのを聞いて、「“頑張れ”って言ったら1カ月会社を休んでいい時代? じゃあ何て言えばよかったの?」と追及している女性に質問すると、「何も言わずに見守って、うまく行ったらプレッシャーを感じさせない程度にほめる。寄り添ってあげれば彼女の気持ちは折れなかった」という答えが返ってきた。 それに対して市郎は「気持ち悪い。なんだよ“寄り添う”って。ムツゴロウかよ(笑)」とバッサリ。そして「冗談じゃねえ! こんな未来のために、こんな時代にするために俺たち働いてるわけじゃねえよ」と言って、市郎お得意の“根性論”を展開。 公共マナーなど、昭和の常識が令和では非常識になることをバスの中で身をもって体験した市郎。しかし、いろんな“ハラスメント”によって人との関わり方が難しい令和の時代における違和感を忖度なく言えるのも昭和から来た市郎だからできること。 良いか悪いかは、これまた判断が難しいが、“令和の常識”に対して市郎の発言は一石を投じたようにも感じられた。ジェネレーションギャップならぬ時代のギャップが今後の展開にどういう影響を与えるのか楽しみになってきた。 ◆文=ザテレビジョンドラマ部