福島県内拠点企業の知財審査を短縮 特許庁 産業集積、復興促進へ
浜通りにロボットなどの新産業を集積する国家プロジェクト「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」や福島県の復興を後押しするため、特許庁は22日、県内企業などが出願する特許や商標に関する「早期審査」の要件を緩和した。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被災事業者に限定していた優遇制度を全県に広げ、県内企業の競争力を高めるとともに、県外からの新たな企業立地につなげる。 県内に拠点がある事業者を対象に、復興やイノベーション創出に貢献する発明や意匠、商標の早期審査の申請を可能にした。今回の措置により特許審査の場合、一般的に請求から着手まで10カ月程度かかるところ、2カ月程度まで短縮できる。災害救助法の適用を除き、全県で優遇措置を講じるのは全国で初めて。 国内では物価高や人手不足などの課題に対し、設備投資や賃上げを行う原資となる新たな技術、ビジネスモデルの開発に向けた企業の取り組みが活発になっている。福島県で優遇措置を講じることで、県内企業が他地域に先駆けて優れた技術やアイデア、ブランドなどを知財として保護・活用でき、競争力の強化が期待される。新たな産業基盤の構築を促進し、復興の加速化につなげる。県外の企業に対しては優遇措置を前面に打ち出し、県内立地への呼び水としたい考えだ。
特許庁は昨年3月、日本弁理士会、日本商工会議所、工業所有権情報・研修館との4者で知財経営支援ネットワーク構築に関する共同宣言を実施。県や県発明協会、県銀行協会などによる「ふくしま知財戦略協議会」との連携により、知財に関する全国水準の幅広い情報を共有し、県内で優れた技術などを持っている企業の掘り起こしや支援の強化を目指す。 特許庁と県、福島イノベーション・コースト構想推進機構は22日、県庁で知的財産の保護や活用に関する連携協定を締結した。特許庁の浜野幸一長官、内堀雅雄知事、イノベ機構の斎藤保理事長が協定書に署名を交わした。内堀知事は急激に変化する社会情勢の中、企業が持続的に発展していくために付加価値の高い製品などを生み出す必要性を指摘。「知財の有効活用が一層重要となっている。知財力を生かした知財立県ふくしまの実現に向けて全力で取り組む」と強調した。