箱根駅伝Stories/激坂王として3度目の山に挑む国士大・山本雷我「出し切って、一番いい順位を」
駅伝主将の重圧受け止め復活
そんな強い思いとは裏腹に、故障もあって本来の力を出せずに苦しんだ。 6月の全日本大学駅伝関東選考会で国士大は10位に入り、7年ぶりに伊勢路に駒を進める。しかし、山本は選考会、11月の本大会ともに出走していない。箱根駅伝予選会もコンディションが整わず、走ることができなかった。 「『予選会、落ちてはいけない』『箱根駅伝に出られなかったら自分の責任だ』と自分に言い聞かせて練習をしていて、それがプレッシャーになってケガにつながって、調子も落としてしまったんです」 駅伝主将を欠きながらも、チームは予選会を8位で通過し、8年連続の本大会出場を決めた。この仲間の力走が、駅伝主将の目覚めを促した。 秋からは徐々に調子を取り戻し、10月には5000mで14分29秒14、10000mで29分33秒84と、トラックで立て続けに自己ベストを更新。11月の激坂最速王決定戦を制し、改めて上りの強さをアピールした。 「みんなががんばって予選会を通過してくれて、ちょっと心が落ち着きました。激坂最速王決定戦は『自分のために走ろう』と思えたのが優勝できた要因だと思います」 最後の箱根駅伝、本心では10区を走ってみたいという思いもある。「10区は目立つし、応援がすごいので(笑)。でも、チームのために、やっぱり自分が5区を走らなきゃいけない」と、3年連続の山上りへ、準備を進めてきた。国士大が最後にシード権を獲得したのは1990年の第66回大会。チームは34年ぶりのシード権獲得を目指し、燃えている。 小川博之駅伝監督も「雷我は自分の強みに特化して取り組んできました。5区の走り方を熟知しています。最後の箱根、力を出し切って走ってくれると思っています」と信頼を寄せている。 4年間、合宿所で生活をともにし、切磋琢磨してきた山本龍神(4年)も「5区に雷我がいるのは頼もしいです。小田原中継所までいい順位で持っていければ、雷我がシード圏内に押し上げてくれるはず」と話した。 卒業後は陸上競技を離れると決めた。今回の箱根駅伝が、競技者として最後の大舞台になる。 「目標は区間5位。復路をいい位置でスタートさせてあげられたらいいなと思っています。自分の人生にとって、こんな大きな舞台は最後になると思う。出し切って、一番いい順位でゴールしたい。でも、入れ込み過ぎず、いつも通りに走りたいという気持ちもあります」 力まず、自然体で、箱根の急峻へ挑む。 やまもと・らいが/2002年2月7日生まれ。福井県越前市出身。福井・武生六中→敦賀気比高。5000m14分29秒14、10000m29分33秒84
小川誠志/月刊陸上競技