「光る君へ」一条天皇役で大注目の塩野瑛久、「受け入れてくれる人にしか言わない」引かれる可能性のある“アニメ作品の見方”
現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」の一条天皇役で世間から注目を集め、さらにWOWOWドラマ「ゴールデンカムイ ー北海道刺青囚人争奪編ー」や「無能の鷹」に出演するなど、ドラマや映画に引っ張りだこの俳優・塩野瑛久さん。自分は“野良猫”と一緒だと考え、“人目を気にせず、好きなように生きる”をモットーに自由で気ままな主人公・チャチャ(伊藤万理華)の恋と成長を描いた映画「チャチャ」では、キーマンとなる謎の男・護を演じている。そんな塩野さんに、本作の撮影秘話や現場で感じたこと、さらにアニメ作品へのアツい想いなどを語ってもらった。 【写真】映画「チャチャ」の場面写真。塩野瑛久演じる護(まもる)が目隠しをされて手足を縛られ… ■監督の思う護を表現するのは「かなり難しかったです」 ――本作の監督を務めた酒井麻衣監督とは2020年にドラマ「38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記」でご一緒されていますが、今回久々にお仕事することが決まったときはどのような心境でしたか。 【塩野瑛久】ドラマでご一緒したときに、作品の世界観を作り上げていく姿や現場を引っ張る姿を見てすごいなと思い、感性が光っている方という印象を受けて、またご一緒したいなと思っていました。今回、酒井監督のオリジナル脚本の作品でのお声がけということもすごくうれしかったです。 ――本作はラブストーリーだけじゃなく、サイコスリラーの要素も入っていて酒井監督のセンスが爆発したとてもおもしろい作品だと感じました。塩野さんの中で“監督のセンスが光っているな”と感じた部分を教えていただけますか。 【塩野瑛久】本作のすべてに監督のこだわりが詰まっていると感じましたが、驚いたのは、チャチャが職場で使っていたキーボードへの監督のこだわりです。聞いた話では、発注して最初に届いたキーボードが監督のイメージと違っていたらしく、別のものを注文し直したそうなんです。 ――冒頭で映るカラフルなキーボードは印象的でした。 【塩野瑛久】色も形もかわいいですよね。そこに監督のこだわりの強さを感じましたし、ほかにも美術や小物などユニークなものが画面に映り込んでいると思うので、細かくチェックしていただきたいです。 ――塩野さん演じる護(まもる)は、とある人物に目隠しをされて手足を縛られますが、縛っている布ですらちょっとオシャレに見えてしまいました(笑)。 【塩野瑛久】多分そこも監督のこだわりだと思います。普通の縄ではないもので縛るというのがやはりポイントなのかなと。あの布はビジュアル的にも本作の世界観にマッチしていますし、その辺に置いてあったものを使ったというところにリアリティを感じられるのもおもしろいですよね。 ――護が置かれている状況は笑えないのですが、彼はあまり恐怖心を感じていないように見えました。コミカルなシーンもありましたが、監督からはどのような演出があったのでしょうか。 【塩野瑛久】台本を読んだときに、“もしも僕が護のような状況に陥ったら、きっとこのぐらい必死になるよな”と思うイメージがあったので、それをテストでやってみたら『もう少し抑えましょうか』と監督が仰ったんです。イメージのすり合わせをしようと思い監督と話したところ、あまりにも切羽詰まった表現をしてしまうと作品の世界観が壊れてしまうのと、“少し天然で抜けている護”に見えなくなってしまうからと説明してくださいました。 そのあと試行錯誤しながらやってみたのですが、監督の思う護を表現するのはかなり難しかったです。監督が求める表現に悩んでいるのは自分だけかと思っていたら、主演の伊藤万理華さんも中川大志さんも同じように苦戦されたと仰っていて、ちょっと安心しました。 ■アニメ作品は「カットやシーンごとの意味が明確に感じられるので興味深い」 ――伊藤万理華さん、中川大志さんとの撮影はいかがでしたか。 【塩野瑛久】大志くんとは以前共演したことがあるので「久々だね」とあいさつしてから撮影に入りました。伊藤さんはすごくフラットにお話しされる方だったので“一緒にいてラクだな”と思いました。クランクアップのときに、伊藤さんから手描きのイラスト付きのメッセージカードをいただいたのですが、そういう部分がすごくチャチャっぽいなと感じたのを覚えています。 ――チャチャは“血”に惹かれ、中川さんが演じる樂(らく)は“水晶体”に惹かれてしまうように、塩野さんにとって周りには理解されない“趣味”や“惹きつけられるもの”はありますか。 【塩野瑛久】アニメーション作品を観るときの温度感が人と違うのか、語る相手を選ばないとドン引きされる不安を感じたことはあります(笑)。 ――マニアックな見方をされているということでしょうか? 【塩野瑛久】“ワンカットワンシーンに一体何枚の絵が使われているんだろう?”とか“○○のような効果的な場面があったから、次のシーンのこの部分により大きな意味が出てくるんだな”と、つい深く考えながら観てしまうんです。 ――かなり集中しながらアニメをご覧になっているのですね。 【塩野瑛久】そうですね。だから“ながら見”はできないです…。マニアックな感想を話してもあまり理解されないですし、めんどくさい奴だと思われても嫌なので、受け入れてくれる人の前でしか言わないようにしています(笑)。 ――最近はどんなアニメをご覧になっていますか。 【塩野瑛久】10月から「Re:ゼロから始める異世界生活」というアニメが放送されるのですが、過去の話で忘れてしまった部分があるので、放送済みのシーズンを見直して備えています。 ――アニメ作品への本気度が伝わってきます!ちなみにアニメ作品が俳優という仕事に影響を与えているなと感じることはありますか? 【塩野瑛久】あります。たとえば実写の映像作品は、カメラマンが3次元をカメラで追ったり捉えたりしますが、アニメの場合はカメラワークというものが存在しないので、キャラクターに対してどの角度から撮って背景はどのぐらい入れてというのをゼロから描いているんです。 それなのに“このカメラワークは印象的だな”とか“この画角おもしろい”と感じさせるアニメってすごいなと。そういう視点でアニメを観るとすごく学ぶことがありますし、実写作品よりもカットやシーンごとの意味が明確に感じられるので興味深いです。 ――ゼロから描かれているものだからこそ、絵の意図がしっかりと感じられるのですね。 【塩野瑛久】はい。アニメ作品は常に新しい発見があるので観ていて楽しいです。 ■塩野瑛久が語るドラマ「ザ・ボーイズ」のおもしろさ ――以前、塩野さんがおすすめ映像作品を紹介されている記事を拝見したら「ザ・ボーイズ」S(シーズン)4をセレクトされていました。このテレビシリーズのどんなところにおもしろさを感じましたか。 【塩野瑛久】「獣電戦隊キョウリュウジャー」に出演して以来、ヒーローが登場する作品が好きになってたくさん観たんです。ただ、「ザ・ボーイズ」は「アベンジャーズ」のような、どちらかというと正義のヒーローが集まっているイメージが強い作品を揶揄するようなドラマシリーズで、そこにすごくおもしろさを感じました。 ――「ザ・ボーイズ」S1は、欲と名声にとりつかれ、腐敗したスーパーヒーローたちを「ザ・ボーイズ」と呼ばれる特殊な能力を持たないグループが倒そうとする物語ですよね。昔、新幹線での移動中に観始めたらとんでもないグロ描写があり、すぐに画面を閉じたことがあります(笑)。そのあと自宅に帰ってからゆっくり観ました。 【塩野瑛久】このドラマは過激なシーンが多いので、人が多い場所での観るのは難しいかもしれない(笑)。でも、スーパーヒーローが権力を持つと恐ろしいことが起こるとか、スーパーヒーローの存在によって生じる歪みとか、学ぶことも多い作品だと思います。 ドーパミンが出てしまうような刺激的なシーンももちろんありますが、自分とはかけ離れた世界観だからこそ楽観視できますし、人間の心理を描いたエピソードやダークユーモアが効いているシーンも含めて楽しめるのでおすすめです。 ――話は変わりますが、今年は「光る君へ」や「ゴールデンカムイ ー北海道刺青囚人争奪編ー」など幅広い作品に挑戦されていますが、ここ最近で俳優としての変化を感じたことがあれば教えていただけますか。 【塩野瑛久】変化は特に感じていないです。作品ごとに求められることが違いますし、元々あまり凝り固まった考えを持たずに柔軟でいようと意識しているので、お芝居との向き合い方も変わっていないのかなと。どんな作品においても大事にしているのは、自分が演じる人物を誰よりも理解してあげること、愛すること、そして最大の味方であるということ。この三つは常に意識しています。 ――最後に、今後プライベートでやってみたいことを教えていただけますか。 【塩野瑛久】愛犬と一緒にグランピングしに行きたいです。ホテルに泊まるよりも、グランピングの施設の方が気兼ねなく過ごせるんじゃないかなと思っています。 取材・文=奥村百恵 ◆スタイリスト:能城匠 ◆ヘアメイク:時田ユースケ (C) 2024「チャチャ」製作委員会