「まったく予想できないストーリー」「展開に引き込まれていく」斬新なタイムループに裏切られる人続出…!繰り返し観たくなる『ペナルティループ』の魅力
“50歳の新人監督”として『人数の町』(20)で注目を集めた荒木伸二監督が、恋人を殺された男の一風変わった復讐をオリジナル脚本で描く『ペナルティループ』。3月22日(金)に公開を控える本作は、“タイムループ×復讐劇”の斬新な組み合わせが話題を集めている。 【写真を見る】予想外の展開に裏切られる!一筋縄ではいかない『ペナルティループ』に翻弄される人が続出! 「まったく予想できないストーリーで引き込まれた」(30代・男性) 「あらすじと雰囲気からこんなに笑える展開になるとは思っていなかった」(20代・女性) 「予想外の展開に進んでいってとてもおもしろかった」(20代・女性) 試写会で一足早く作品を鑑賞した観客からも「予測不能」との声が上がるなど、従来のタイムループものとは一線を画す本作。その魅力を試写会コメントと共にひも解いていきたい。 ※本記事は、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。 ■斬新なタイムループが繰り広げられる驚きのストーリー 素性不明の男、溝口(伊勢谷友介)に恋人の唯(山下リオ)を殺され、喪失感を抱える岩森淳(若葉竜也)は、ある晴れた日、綿密に立てた計画を実行し自らの手で溝口を葬り去る。ついに復讐を成し遂げ、深い眠りにつく岩森だったが、翌朝ベッドで目を覚ますと、ラジオから聞こえてきたのは昨日と同じ“6月6日”を告げる声だった。 殺したはずの溝口が生きていることに戸惑いながらも、その日も昨日と同じように溝口を殺し眠りにつく岩森だが、翌日もその翌日も“6月6日”が訪れる。やがて、岩森が溝口への復讐を繰り返す一方で、殺され続けている溝口もまた、同じ日をループしていることに気づき…。 タイムループものといえば、意図せずループに巻き込まれた主人公がそこから抜けだすために奮闘する展開が“お決まり”。本作も「復讐を果たした主人公に対する罰がタイムループなのかと思った」(20代・女性)とあるように、初めこそ巻き込まれ型を匂わせているが、何度でも復讐できる“ペナルティループ”制度を主人公が自ら選択したことがのちに判明。そこから意外な展開へと突入していく。 「ループが自分自身の意志であるということが意外だった」 「不気味でシリアスな空気から、コメディな空気に切り替わったのがおもしろかった」(20代・女性) 「復讐を繰り返すことで恋人を取り戻す話だと思っていたが、想定よりもリアリティのある作品だと思いました」(20代・女性) など、シリアスなムードから一転し笑える展開が訪れたかと思えばどこか感傷的になったり…空気感まで目まぐるしく変わる、思いも寄らない展開の連続に翻弄された人も多かったようだ。 ■ループに没入感をもたらす荒木監督の手腕 あまり多くが語られないままストーリーが進んでいく本作だが、そのなかで徐々に全貌が明らかになっていく流れも鮮やかで、随所で荒木監督の手腕が光る。 「ループものはフィクション感の強い映画が多いですが、本作はリアリティがあって新鮮でした」(10代・女性) 「垂直農法工場の無機質さがペナルティループというシステムの気味の悪さを助長している」(20代・女性) 「不穏な音楽と暗い映像、セリフの少なさによって不気味な印象を受けながらも、自然な流れで大きく変化していったところ。メリハリがあってよかったです」(20代・女性) 上記のコメントが示しているように、淡々とした雰囲気によってリアリティを出すと同時に、美術や音楽によって不気味で現実離れした空気感を醸し、「この世界は現実なのか?」という違和感を演出。 「回を重ねるたびに少しずつ変わってきて『あれ?』という違和感、展開に引き込まれていく感覚が楽しかったです」(30代・男性) 「映像、セリフ、音を通してループにのめり込み、一緒にループしているような感覚になる」(20代・女性) 「ループによって話が進んでいるような感じがしすぎず、いい意味で作品がどうなっていくのかをもっと知りたいと引き込まれた」(30代・男性) 全貌はわからないが、気づけばペナルティループの世界へと飲み込まれていく…そんな不思議な本作の手触りはむしろ心地よく、虜になった人も多かったようだ。 ■俳優の演技が浮かび上がらせる岩森と溝口の関係性の変化 主人公が自らループを選んだことに加え、「犯人も記憶を残していることによって、同じ日なのにまったく違う1日になるところがおもしろい」(30代・男性)というコメントの通り、ループしているのが主人公だけではない点も本作のポイント。 来る日も来る日も溝口のことを殺す岩森はもちろん、殺され続ける溝口もループしているため、毎日殺されなければならない理由を探ろうと岩森に接近。結果、同じ日の繰り返しにパターンが生まれ、キャラクターの心境や関係性にも変化が生じていく。 「ループを重ねることで知らない人から知っている人に変わり、殺す時の心情が変わっていったのがおもしろかった」(20代・女性) 「2人の間に、現実なら絶対に生まれないであろう空気感があったのが印象的でした」(20代・女性) 「恋人を殺した犯人でも近くにいれば情が湧いてしまうんだなと思った」(30代・男性) そんな変化を体現した俳優たちの演技も見事で、「若葉さんと伊勢谷さんのセリフがなくても伝わる演技がすばらしかった」(10代・男性)という声も。 『街の上で』(21)の今泉力哉監督や『愛にイナズマ』(23)の石井裕也監督など、名だたる監督とこれまでも共に映画を作ってきた主演の若葉だが、本作についてはカルトな代表作と認定しているそう。演じた岩森というキャラクターを、初めこそ復讐に取り憑かれ冷たい雰囲気を漂わせつつも、心が揺れていく様子を口調や表情などでさりげなく表現。「時を経ることで犯人への先入観から脱却し、契約当初に望んでいた結果なのか?という混沌とした変化を感じた」(20代・女性)、「若葉さんの哀愁漂う演技がよかったです」(30代・男性)など、自ら望んだはずの復讐に意味はあるのかと虚しさを感じさせる岩森の姿が心に刺さる。 一方、伊勢谷が演じる溝口もミステリアスな男として登場するが、繰り返し罰せられるうちに「殺されるの、痛いんだよ」と愚痴をこぼすようなコミカルな一面も露わになっていく。「犯人なので悪役ともいえるけど、人間味があり印象に残った」(30代・男性)、「悪役顔に反して殺されることを素直に受け入れるところにギャップがあっていい」(20代・女性)など、どことなくチャーミングな演技が人間味を醸しだしており、観客の印象に残ったようだ。 「一定の縛りやルールがある、区切られた空間の中において人間関係が描かれるところが、荒木監督の魅力だと思います」(30代・男性) 「1日の終わりの結果は同じなのに、過程にどんどん変化が生まれていく様子には人間の不可思議さを感じました」(20代・女性) といったコメントにもあるように、ループという“枠組み”のなかで繰り広げられる人間の姿こそ、荒木監督の作家性が最も表れた見どころと言えるだろう。 ■過激なペナルティループ制度を観客はどう受け止めた? そんなユニークな話の肝となるのが、架空の“ペナルティループ”制度。映画にループというエンタメ的なおもしろさをもたらすのはもちろん、作品の深みの部分も担っている。「望めば何度でも犯人に復讐をできる」というプログラムに対しては、「いままで考えたこともなかった発想」(30代・男性)とあるように、突飛かつ過激なアイデアゆえ、様々な意見が飛び交っており、本作が観客になにかを訴えてくる作品であることが伝わってくる。 よくあるタイムループものかと思いきや予想外の展開へと突入し、シリアスとコミカルの狭間を行き交いながら観客を翻弄する『ペナルティループ』。観る前と観たあとでは作品の印象が180度異なると言っても過言ではない本作は、一度の鑑賞では咀嚼しきれないので、本編の岩森同様に一度と言わず、二度、三度とリピートすることをオススメする。 構成・文/サンクレイオ翼