『潜入兄妹』はっきりと見えてきた物語終盤の方向性 『占拠』シリーズとリンクする点も
“幻獣”の幹部全員から認められ、ついに父の仇である鳳凰(藤ヶ谷太輔)へとたどり着いた貴一(竜星涼)と優貴(八木莉可子)。すぐにでも鳳凰を逮捕してもらおうと入間(及川光博)に頼む貴一だったが、父殺しの証拠がないと言われてしまう。そこで鳳凰の懐に飛び込むため、朱雀(白石聖)から指示を受けてとある仕事に挑むこととなる。 【写真】九頭龍(川瀬陽太)と話す鳳凰(藤ヶ谷太輔) 『潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官』(日本テレビ系)は11月9日に放送された第6話から後半戦へと突入した。ドラマ開始時に“顔が隠されていた”5人の登場人物たちが出揃ったのと同時に、終盤の方向性がはっきりと見えてきたといえよう。それは貴一による鳳凰ないしは幻獣自体への復讐に加え、幻獣と敵対する“九頭龍”(川瀬陽太)が率いる組織との対決、その両者を壊滅に追い込もうとする警察の思惑。この3つを大きな軸として、ハコの面々や幻獣幹部たちのバックグラウンドにも少しずつ触れられていく。 今回のエピソードでは、以前貴一が入間に渡した朱雀のモンタージュから、彼女の素性が判明する。雲出茜という名の元税理士で、7年前に不倫相手だったベンチャー企業CEOの男のために脱税を行なったことで逮捕され1年間服役。幹部たちの回想シーンが6年前ということから考えるに、服役後になんらかのかたちで九頭龍のもとで“仕事”をして幹部に引き入れられたのだろう。ちなみに雲出の誕生日は5月21日なので、『新空港占拠』(日本テレビ系)で白石聖が演じていた狭山澪と同じ。年齢は、おそらくひとつ違っているようだ。 これで朱雀=狭山澪という『占拠』シリーズと直接つながる線は明確に否定されたわけだが、今回は異なるかたちで『占拠』シリーズとのリンクが見受けられた。それは貴一たちが通販サイト会社「SaySayStreet」に潜入し、仕掛けたランサムウェアの解除と引き換えに3億円を振り込ませようとして窮地に陥るシーン。犯人とグルであるとバレて銃を向けられた貴一たちを救おうと、優貴が見つけ出したのはその会社の内部機密。裏で違法薬物を輸入して売り捌いている証拠となる帳簿と顧客リストを突きつけるのである。 その顧客リストのなかに、「土佐大輔 界星堂病院 医師」という文字が。界星堂病院は『大病院占拠』(日本テレビ系)の舞台となった病院であり、土佐(笠原秀幸)はその第3話で鬼たちのターゲットとなったタレント医師。違法薬物パーティを開き、それに参加した女性が命を落としてしまった過去があり、その女性の父親が鬼の一人となり、彼の隠蔽していた罪が明らかにされた。期せずして、鬼たちがやった土佐への復讐のさらに元締めを攻め落とすことになった今回の詐欺だが、もちろん幻獣幹部たちの目的は鬼たちとは異なるものだ。 この通販サイト会社は九頭龍の組織のフロント企業(反社などが裏で悪事をはたらくために偽装目的で立ち上げた企業や、協力企業のこと)のひとつであり、それらを同時に攻撃して複数のハコに同じような詐欺を行わせることで、どこかのハコに潜り込んでいる九頭龍側の内通者をあぶり出すねらいがあったと。案の定、あぶり出されたのは貴一たちのハコであり、次回はその内通者探し――すなわちハコの誰かのバックグラウンドが物語のカギを握るというわけか。
久保田和馬