鳥谷 MLB移籍難航の理由とは
阪神からFAとなりメジャー移籍を目指している鳥谷敬だが、ウィンターミーティングが終了しても、まだ契約の見通しが立っていない。ひょっとすれば、代理人にスコット・ボラス氏を選んだことが裏目に出ているのかもしれないのである。誤解のないように断っておくと、ボラス氏は力のある代理人だ。様々な評判があるが、味方についたとき、彼ほど心強い存在はないのではないか。彼のクライアントらは、一様にそう口を揃える。だが、今回に限っては、障害になりうる。相手との相性の問題だ。 メジャーの中では、ブルージェイズが鳥谷に興味を示して来た。鳥谷自身、そのことを知っていたはずである。ブルージェイズのスカウトは、何度も日本の球場に足を運んでいたのだから。しかし、鳥谷がボラス氏を代理人に選んだとき、ブルージェイズは顔を曇らせたに違いない。彼らとボラス氏の関係は、長く冷え込んだままなのである。 現在、ブルージェイズには、ボラス氏のクライアントは1人もおらず、2008年にブラッド・ウィルカーソンという選手が在籍したのが最後で、2009年のドラフトではボラスが代理人を務めるジェイムス・パクストン(現マリナーズ)を1巡目で指名したものの、合意できなかった。以来、ブルージェイズとボラス氏の関係は微妙で、今なお、改善の兆しがない。メジャーリーグロースターにボラス氏のクライアントがいないのは、ブルージェイズと経済的な事情から使えるお金に制限があるアスレチックスだけである。 両者を隔てているのは、ブルージェイズの5年制限。彼らは、最長でも契約を5年までに限定している。2006年にバーノン・ウェルズと7年総額1億2600万ドルで契約を延長したが、2008年にポール・ビーストンが社長兼最高経営責任者に復帰すると、契約年数に上限を設けた。だが、ボラス氏にしてみれば、ブルージェイズのオーナーには資金力があるなのになぜ、というところだろう。先週、サンディエゴで行われたウィンターミーティングでも、鳥谷に関してブルージェイズと交渉していることを認めた上で、彼は、改めてブルージェイズの方針を批判した。 「5年という上限を設けているチームは、彼らぐらいだ。そんなことをしたら、才能のある選手たちとの関係を自ら断っているようなものではないか。それでは、ア・リーグの東地区で戦い抜くのは困難だ」 鳥谷の交渉そのものが、ブルージェイズの5年ポリシーに引っかかるとは思えないが、契約の大小に関わらず、ボラス氏とブルージェズのこうしたギスギスした関係を考えると、やはり、交渉に影響しうるのではないか。 ブルージェイズが鳥谷を一番高く評価していると見られるだけに、この複雑な関係は厄介だが、ブルージェイズの状況が一方で変わりつつもある。ブルージェイズのオーナーが今、ビーストン社長兼最高経営責任者の運営に不満を持ち、新任を探しているそうだ。候補の1人が、ナショナルズのマイク・リゾGM(ゼネラルマネージャー)で、彼が動けば、それは鳥谷にとって追い風になる。リゾGMは、ボラス氏と価値観が近く、良好な関係を築いているのだ。現在ナショナルズには、ブライス・ハーパー、ステファン・ストラスバーグ、ジェイソン・ワース、ダニー・エスピノーザ、ラファエル・ソリアーノといったボラス氏のクライアントがいて、関係の深さは、ブルージェイズとは対照的である。