ダイエットに挫折、じゃあ〝薬でやせる〟がどこまでもNGな理由 治療が必要ない人が使用すると起きること
効果ある薬だからこその健康被害
一方で、現在までに、医師の裁量で行える自由診療によって、本来であれば適応外でも、ウゴービ、あるいは同じ成分の薬が処方されているとみられるケースが問題になっています。こうした自由診療は、ネット広告を入口にしていることが多く、さも気軽にやせられるようにうたう宣伝には注意が必要です。 ウゴービ、あるいは同じ成分の薬を“一般的なダイエット”に使用するのがNGであることには、大きく二つの理由があります。 一つ目は、こうした適応外の使用により、2型糖尿病患者の命にかかわる、薬の在庫不足が起きてしまうことです。 というのも、インスリンにはもう一つ、もしかするとこちらの方が有名かもしれない作用として、血糖値を下げる働きがあります。 そのため、GLP-1受動態作動薬は、もっとも多いタイプの糖尿病である2型糖尿病の治療薬として、以前から国内でも、患者の高い血糖値を下げる目的で、長らく使用されてきました。 でも、その成分はノボノルディスクファーマ社が製造販売する2型糖尿病治療薬「オゼンピック」と同じです。つまり、自由診療で医師が肥満の解消のために適用外でも使用しようとすれば、この薬を使用できないことはないのです。 実際、厚生労働省は23年7月、「GLP-1受容体作動薬の在庫逼迫に伴う協力依頼」として、各都道府県等の衛生主管部に事務連絡をしました。適応外でGLP-1受容体作動薬が使用され、在庫がひっ迫したことで、2型糖尿病患者にこの薬が行き渡らなくなるおそれがあったためです。 二つ目は、こうした適応外の使用は、当然、安全ではないことです。厚生労働省や消費者庁、国民生活センターは、適応外で処方されるGLP-1受容体作動薬について「糖尿病でない人への安全性と有効性は確認されていない」として注意喚起を繰り返してきました。 その副作用には吐き気・下痢・嘔吐といった胃腸障害だけでなく、低血糖、急性膵炎、胆嚢炎など重篤なものもあるためです。 上記の適応外とは、2型糖尿病患者のための薬を肥満の治療に使用することでしたが、前述したように、治療が必要な肥満症患者のための薬が、“一般的なダイエット”を目的に使用される場合も同様に適応外であり、健康被害のリスクがあります。 特に、“一般的なダイエット”は、そもそも肥満の定義に当てはまらない人が、美容などを目的に行うこともあります。そんな人が、ある意味では糖尿病の患者の命を左右するような効果のある薬を、本来NGなのに使用してしまうことになるのです。 ダイエットはあくまで、食事と運動。それも、無理のない範囲で行うしかありません。新しい選択肢があるかのような誘い文句をネット広告で見かけても、絶対に手を出さないようにしましょう。